#15 妹の推理
「兄ちゃんに確認なんだけど」
「うん」
「最近、誰かに付き纏われてるとか無い?ストーカーみたいなのに」
「はぁ?ストーカー!? いやナイナイナイナイ!」
「ミキさん以外の女性に告白されたこととかは? 最近じゃなくても大学に入って以降とか」
「ナイナイナイって! 俺、大学じゃ女子に関しては知り合い程度は居ても、仲が良い友達とか居ないし。いつも男としかつるんでないぞ?」
「バイト先とかご近所さんとかは?」
「バイト先だと、先輩とか社員で女性は居るけど、みんな俺がミキと付き合ってるの知ってるし、ご近所さんなんて、挨拶しかしたことないレベルだぞ?」
「なるほど」
「ヒトミちゃん。ヒロくんのストーカーが犯人だってことなの?」
「断言は出来ませんが、私はそうじゃないかって思ってます」
「マジかよ…」
「普段身に着けてる物や使ってる物で、しかも目に付く場所に置いてあった物ばかり盗んでるのでそう考えたんですけど。 ただの空き巣なら金目の物から狙うでしょうし、知り合いとかでしたらバレ難い様に奥に仕舞ってある物とかを狙うと思うんです。 盗まれた物がどれも目に付く場所に仕舞ってあったっていうのは、普段からよく使ってる物だと考えて盗んだんじゃないかと。 でも、犯人像については、全く分かりません。女性かな?とは思うけど、大学の知り合いなのかバイト先の知り合いなのか、それとも全く知らない人なのか、検討も付きません」
「そりゃそうだよな…、俺自身が全く心当たりないんだし」
「でも、さっき下駄箱とかクローゼット確認しながら、犯人になったつもりでこの部屋に忍び込んで物を持ち出す行動をイメージしてみたの」
「ほう」
「それで犯人の行動を推理したんだけど、まず忍び込んだのはベランダからで間違いないと思う」
「でも鍵が…、って昨日は鍵掛けてたかハッキリしてなかったんだっけ」
「そのことだけど、一昨日の木曜日に、友達の三島さんって人と山田さんって人が遊びに来た時に、ベランダでタバコ吸ってたって言ってたよね?」
「うん。その二人はウチに来ると毎回ベランダでタバコ吸ってるね」
「それで、二人は吸い終わって部屋に戻る時に、鍵まで掛けてた?」
「むむ?言われてみれば、三島も山田も鍵までは掛けなかったかも」
「でしょ? それで、木曜日は鍵掛けてないまま午後は学校に戻って、学校終わった後は夕方から夜までバイトだったんでしょ?」
「なるほど…、その間の時間、ベランダはずっと鍵掛かってなかった可能性が高いな」
「その後もそのままだった可能性もあるんじゃないの?」
「言われてみれば…、木曜日の夜にバイト終えて帰ってから窓の開け締めはしてない気がする。 そうなると朝まで鍵が掛かってないままか。 あ、しかも金曜日は授業が2コマ目からでその時間に合わせて起きてるし、4コマ目まで授業が詰まってて夕方まで部屋に戻らなくて、バイト前に部屋に戻ってきた時も準備でバタバタしてたから窓の鍵なんて気にしてなかったと思う。 下手したら金曜日の夜までずっと鍵掛かってないままだったかも…」
oh マジかよ…
なんてこった…
ベランダにさえ登ることが出来れば、簡単に部屋に入れるじゃん!
「金曜日の夜は、窓を開けた憶えはあるの?」
「確か…、シャワー浴びて洗濯物して、風通し良くしようと思って網戸にして、2時間位経ってから寝る時に締めたと思う」
「木曜日のお昼頃から金曜日の夜までの間は施錠の確認はしてなくて、歯ブラシを最後に使ったのが金曜の朝だとすると、犯人が部屋に入ったのは、金曜日の日中大学に行ってる間か夕方から夜のバイトに行ってる間の可能性が高いね」
「そういうことになるな…」
「5月の下着が無くなった時も金曜日って言ってたよね?」
「そうだ!あの時も金曜日だったわ! しかも今週と同じようにあの週も木曜日に三島たち遊びに来てたわ」
「兄ちゃんの友達がどんな人たちか知らないから、意図的に鍵を掛けなかったのか、無意識に掛け忘れたのかまでは分からないけど、確認はしたほうが良さそうだね。 それと犯人のことだけど、金曜日に鍵が掛かってないことを把握してたか、曜日を絞らずに忍び込もうとして、たまたま鍵が開いてた時だけ忍び込めたのか、ソコは分からないけど、どちらにしてもベランダの施錠は絶対に気を付けないとダメだよ」
「そうだな、ヒトミの言う通りだね…、施錠はキチンとするよ。 それと三島と山田には月曜日にでも一応探り入れてみるけど、でも、三島達はウチに毎週来てる訳じゃないし、流石にいつも一緒にいる友達がストーカーだとは思えないから、犯人はたまたま鍵掛かってない時だけ忍び込んだ様な気がするな」
「ねぇヒロくん?」
「うん?どうしたの?」
「コレって警察に通報した方がいいんじゃないの?」
「警察かぁ。 現金とか金目の物盗まれた訳じゃ無いし、盗難だっていう決め手になるような証拠も無しで、まともに取り合ってくれるかな?」
「でもストーカー規制法とかあるでしょ?ストーカーってことで相談したら?」
「俺も詳しくは知らないけど、多分、よっぽど深刻な状況や被害が出てない場合は、そう簡単に犯人捜査まではしてくれないんじゃないのかな? それに、相手が誰なのか分からなければ、警察は相手に注意すら出来ないし」
「そうだろうね。 下着や靴が1つ2つ無くなったくらいで一々取り合わないだろうね。そんなことで捜査してたら、本当に本人がうっかり紛失しただけだったって話、いっぱい有りそうだし。 相手が分かる様な証拠、例えば大量の手紙とかメールとかが無いと、警察も動いてくれないと思います」
「そっか…」
夕飯やシュークリームを食べてた時は一番テンション高かったミキは、ストーカーの可能性が出て来た途端テンションが下がり、今は目に見えて怯えている。
「大丈夫だよ、これからはちゃんと施錠に気を付けるし」
「でも、何かあってからじゃ遅いんだよ?」
「ストーカーって言ったって、所詮は下着ドロボーみたいなもんでしょ? 男の俺に危害を加えるとかは無いでしょ。 俺よりも、ミキやヒトミの事の方が心配だな」
「そうだね。ミキさんや私が兄ちゃんの関係者だって知られたら、ストーカーに敵意を向けられる可能性があるね」
「えぇ…」
「とりあえずさ、今日はもう外暗いし、ヒトミが帰る時は家まで送って行くよ」
「ちょっと待って!」
俺がヒトミに帰りのことを話すと、ミキが叫ぶ様に声を挙げた。
「どしたの?」
「暗い夜道は危ないよ! それにヒロくんとヒトミちゃんが居なくなったら私ココで一人じゃん!」
「じゃあ一緒に送ってく?」
「だから夜道は危ないでしょ! ヒトミちゃんも今日は泊まって行きなよ!今夜は3人で居た方のが安全でしょ?」
「えー」
「えー」
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