第55話 早朝

※作者からのお願い。久しぶりに執筆してるから設定が抜けているところがあればコメントで教えてください。




「くん、くん。何か臭うネ」



納豆をかき回す俺の頭をくんくんと嗅ぎながら凌龍リンロイが呟いた。



「さゆりの匂いがする……どうしてようじからさゆりの匂いがするアル?」



「な、ななな、なんのこと?」



俺は目を凌龍リンロイからそむけて右側の壁に向かって視線を彷徨わせる。



「昨日、さゆりに一服盛ったのに、ワタシの部屋に来てくれなかったネ。強力な精力剤だったから、一人じゃ解消できないはずだと思うアルヨ。不思議ネ」



「…………」



俺は納豆の入った小鉢をテーブルに置いて、両拳を握ってテーブルに着いた。



やっぱりお前のせいかーーーー!! 

あ、あの後、大変だっただからな。全然、収まらないし、さゆりは泣き始めるし、それに……それに……



「…………」



昨日のことを思い出すだけで背筋がこそばゆくなってくる。



「みぃ?」



俺の膝の上で哺乳瓶を両手で持って起用に吸っているミィが顔をのぞき込むように見上げてきた。



「お兄ちゃん顔が赤いよ?」



「なんでもない」



固く口を閉じて湧き上がってくる羞恥心に蓋をした。



「おはよ~」



さゆりが目をこすりながらリビングに入ってくる。



「…………」

「…………」



俺と目を合わせるとお互い顔をそむけ、何事もなかったように装う。

それを見てほのかが何かを察したように呟く。



「はは~ん」



ほのかは口に手を当ててニマニマと頬が緩んだ表情で俺の顔をのぞき込んでこっそりと耳打ちする。



「昨日はお楽しみだったみたいだね。お兄ちゃん。女の子になったからてっきりそういうものは興味がなくなっちゃったかと思ってたけど……やっぱり男の子だね」



「一つ言っておくが、お前が想像しているようなことはなかったぞ」



俺は納豆をご飯の上にかけて冷静さを保った。

ねばねばと糸を引くそれを見ていると嫌でも昨日のことを思い出してしまう。



「お味噌汁に納豆を入れている時点で動揺が隠せてないけど」



「うぅっ!」



俺の味噌汁が納豆汁になった。



「さゆり~昨日はどうして来てくれなかったアルネ! 寂しかったヨ」



凌龍リンロイは隣に座ったさゆりに抱き着こうとしたが、片手で顔を押しのけられる。



「言わなくてもわかるでしょう。次、あんなことしたら家から追い出すから」



「強いオスの子を孕みたいと思うのは生物の本能ネ。自然の摂理、何も悪いことはしてないアルヨ」



「自然の摂理とか、そんなの知らないし、それにわ、私は女だから!!」



さゆりは顔を真っ赤にして机をバンッと叩いて立ち上がった。



「知ってるアルネ?」



凌龍リンロイはきょとんとした顔でさゆりを見上げた。その顔に悪気はない。



「ん~っ!!! あぁっ! もうなんでわからないの!! 私がこんなに悩んでるのに」



自分の思いが伝わらない歯がゆいさにさゆりは立ったまま悶える。



「さゆり、ご飯は食べないアルカ?」



凌龍リンロイは山盛りもった白米ご飯をさゆりに差し出した。



「……いらない!! いらないよ!!!」



バシッと振り上げた手が凌龍リンロイが持っていた茶碗にあたってはじき飛ばされた。



「あっ」



床に落ちた茶碗からこぼれたご飯が床に散らばる。ばたんっと閉じられる扉。残された俺を含めた4人は固まったように閉じた扉に視線が行った。




「あー……また私は間違ったアルか……」



凌龍リンロイは床に落ちたご飯を集めて苦々しい笑みを浮かべた。



「わたし、人間のことはわからないネ。いつも間違ってばかり、さゆりを怒らせる。何をしたら喜んでくれるかわからない。何をしていいかわからない。だから間違える。きっとさゆりは私のこと嫌いアル」



凌龍リンロイ……」



俺は彼女になんて声をかけていいかわからない。

人間じゃない彼女には人の好きを理解するのは難しのかもしれない。



「とりあえずご飯に変なものを混ぜるのはやめような」



俺はむずむずした股間へ久しぶりに戻ってきたリトルチルドレンに喜ぶべきか、喜ばないべきか迷った。



「お兄ちゃん腰が引けてるけど、どうしたの?」



「な、なんでもないよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る