第54話 夜這い
「せんぱぁい……」
俺は誰かに身体を揺さぶられて起きた。
「うぅ〜ん、なんださゆりか。こんな夜中にどうしたんだ?」
隣で寝ているほのかとミィを起こさないように小声で喋る。
「せ、せんぱい……」
さゆりは足をもじもじさせ、上目遣いで俺を見つめてくる。
「こ、こんなこと先輩にしか、相談できなくて……」
普段よりも頬を紅潮させたさゆりはなぜか艶っぽかった。
「なんだ……」
「実は……」
さゆりは俺の手に自分の股間に押し当てる。
「お、お前何してるんだよ」
こ、こんなこと、ほのかたちに見られたら……
俺はほのかとミィの様子を伺う。二人とも、スースーと寝息を立てていた。
「せんぱい……うぅ……これをどうにかする方法を教えて……」
ん? なんだこの触り慣れたような手の感触は。
「お前もしかして……」
俺はさゆりの顔を見上げる。さゆりは恥ずかしそうに顔を下げて答えた。
「生えちゃった……」
生えた……うん、生えてるね。男だった時の俺よりもご立派なものがさゆりの股間には生えていた。
「な、なんで生えてるんだよ」
「知らない! 起きたらいつのまにか生えていて……わ、私どうしちゃったの?? これってこういうものなの??」
「お、お前! 声が大きい! シー! シーっだ!」
「ご、ごめん……つい興奮しちゃって……男の人って普段からこんな凶悪なのぶら下げてるの?」
しゅんと肩を落とすさゆり。いつも飄々してさばさばしているこいつがこんな反応されると、俺の感覚も少しおかしくなる。
「いや……普段はもっとおとなしいというか……」
彼女のはなんというか元気だ。とても元気だ。元気すぎるくらいだ。血管が浮き出たボディビルダーだ。可愛いは通り越してしまってたくましい。
「どうすれば収まるの。いちよう冷やしてみたんだけど全然腫れが引かなくて……怖いよ先輩……私、死んじゃうのかな……」
さゆりは目から涙をこぼし嗚咽を漏らし始める。
……なんだ、この女子、女子らしい生き物は。本当に俺の知っているさゆりか? あいつだったら「先輩ー! 生えちゃったてへっ」とか言って笑い飛ばしそうな気がするんだけど……
今のさゆりはなんて言うか本当に落ち込んだしおらしい女の子だ。
まぁ、うん、普通に怖いよな。知らないものが生えて、それがこんなに大きくなったら……
でもな、それは普通の生理現象なんだ。
「せんぱい……」
さゆりが俺のパジャマの袖を掴んですがるようにうるうると瞳を濡らして助けを求めてくる。その艶っぽい表情に俺はごくりと生唾を飲み込んだ。たわわに実った胸が目の前にある。
「す、少しだけだぞ……」
俺は仕方がなく起き上がり、さゆりの手を引いてトイレへと連れて行った。
何もやましいことはしない。ただレクチャーするだけだ。
胸がドッドッと勢いよく心音を奏で、身体が妙に熱くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます