第52話 おれ、後輩の家に行ったらなぜか先客がいた。
日が傾いて夜、駅から近い7階建ての多棟型マンションの5階。さゆりが住居を構えるその一室のドアを俺は開いた。
ガチャーーっ
「お帰りなさいネ! ご飯にする? お風呂にする? それとも私と子作りするアルカ?」
チャイナドレスにエプロンを身につけた少女が俺に抱きついてきた。
ミィをだき抱えていた俺は受け止めることができずそのまま押し倒される。
「むぎゅっ」
「むっ、お前、誰アルネ?」
「お、お兄ちゃんから離れて!」
ほのかに引き離され、金髪の少女は俺から離れた。
「どうしたの?」
「おぉ! さゆりお帰りなさいネ!」
扉から顔を出したさゆり目がけて少女は飛びつくように抱きついた。そして彼女の胸元に顔をすりすりさせる。
「誰、それ?」
「あぁ、ちょっと居候させていて……ほら自己紹介して」
さゆりに促されて、彼女は顔を上げた。その瞳は爬虫類のように鋭く。そして宝石のルビィのように赤く輝いていた。
「わたしはさゆりの妻の
「違うでしょ。ちゃんと自己紹介して」
「何も違わないアル。強いものの遺伝子を残したいと思うのは生物の本能ね」
「どうなってるんだこれは……」
俺とほのかが状況が理解できず目を白黒させていると、さゆりははぁーっとため息をついた。
「ダンジョンで勝負を仕掛けられたから、相手をしてあげたの、そしたら家に押しかけてきて、居付いちゃった。誤解しないで、別にそう言う関係じゃないから」
「昨日も一緒に寝たのに、さゆりは恥ずかしがり屋ネ」
「
「あいやー! さゆりは嫌だったアルカ!?」
「普通に寝苦しかったわよ」
「ガーーン!!」
「だいたい女の子同士で子作りとかできるわけないでしょ?」
「そこは心配しなくても大丈夫ネ!」
「何する気?」
さゆりは何やら不穏な気配を感じとったように
「それは秘密アル」
その笑みは、爬虫類が獲物を仕留めるときの鋭い表情に似ていた。その目を見た俺は冷たいものが背筋を走っり、ぶるっと背中が震えた。
「さぁ、客人、入るね! 私とさゆりの愛の巣に!!」
「だから、違うって言ってるでしょ!!」
さゆりの大声がマンション内に響いた。
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