第43話 おれ、幼女。目が覚めたらボス戦だった8
『こ、これは!』
『やつが来るぞ……』
『それは本当に……来るのか?』
『い、いったい誰なんだ!?』
『ギャァオン! ギャァオン!』
『いったい何ドラゴンなんですかね?』
『たぶん金ピカなやつだと思うぜ!』
『ぎゃおーん! ぎゃおーん!』
『ふっ、我らの最終兵器だ』
『最終兵器(制御不能)』
『これ、本当に大丈夫なの? 女の子たち死なない?』
『←私にもわからん』
『うーん、これはやばいですね』
『マぁマー! マぁマー!』
『おい1人別なやつが混じってるぞ』
『それは親を亡くした可哀想なおじさんだ』
『なんだおじさんか。まったく人騒がせだぜ。ママァー!!』
『なんか胸がざわざわしてきた』
『ざわざわ』『ざわざわ』『ざわざわ』
『ざわざわ』『ざわざわ』『ざわざわ』
『ざわざわ』『ざわざわ』『ざわざわ』
ギャァオオオオオオオオオオオオン!!
『き、きたぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』
『見えたぞ! ついに見えたぞ!』
『こいつは大きい!』
『顔だけ見えたけどこれ身体も出てこれるのか!?』
『穴、小さいです』
『拡張必須』
『これは穴を開発しなくてはならないですね』
『穴開発わくわく!』
『おい、1人変なやつが混じってるぞ』
『いったい誰なんでしょうね?』
『ふふっ、俺は穴だって構わず開発するドラゴンなんだぜ!!』
『い、いいドラゴン!! ぽっ!』
『ホモやないかーい!』
『おぉ! なんか空間にひび割れて亀裂が走ってる』
『いったいどんな原理なんでしょうね?』
『未知の技術!」
『↑私にもわからん』
『来るか!? 来ちゃうのか!? 出ちゃうのか!?』
『みんないっせいに名前を呼ぼう』
『いっせーの!!』
『エンペラーファイナルドラゴン!』『終末の黄昏竜!』『ゴールド・エンシェント・ドラゴン!』『べ、別にあんたなんか好きなんかじゃないんだから! ツンデレドラゴン!』『炎帝ジャスティスドラゴン!』『地上最強サウザードラゴン!』『宝玉龍ゴールデンクリスタルドラゴン!』『運命に集いし星の輝き! テンペストドラゴン!』
『お前らまとまりなくて草』
『これが俗に言う烏合の衆ってやつですか』
『←鳥の方がもっとまとまりあるわ』
『言えてる』
『あ、あの僕の考えた名前も言っていいですが? ボロンっ』
『やめとけ』
『やめろ』
『いらない』
『さっさとしまえお前の小さなドラゴン』
『うーん、3点』
『これはダメなドラゴンですね』
『小さくて穴に入らない』
『童貞乙』
『せめてシャイニングバーストドラゴンになってから出直しなさい』
『言えてる』
『お前ら協調性高くて草』
『おい、寄ってたかって弱いもの虐めはやめろ! 可哀想だろ? 言葉は時に暴力になるんだ。してのことを考えてやれよお前ら! ところでそのお股のトカゲはどこのペットショップで買えるのかい?』
『止め刺してて草』
『お前に人の心はないんか』
『通販で買えよ』
『店頭で購入とか勇者かお前』
『何の話ー??』
『こら! 子どもは聞いちゃいけません』
『ママーあそこのおにーちゃん。周りに話を聞いてもらえなくて泣いてるよ』
『ちなみにお前の考えた名前は何だ?』
『黄金龍』
『普通』
『なんだそれ』
『うーん、5点』
『なんの面白みも無くて草!!』
『ちくしょーめ!!』
白い穴から突如として突き出たモンスターの頭。それは黄金色の鱗を皮膚に纏い、紅蓮の瞳と黒く細長い瞳孔、口からは猛々しく
飛び出た巨体は地上に降り立つ前に石人形へと喰らいつこうと襲いかかる。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
石人形は俺に向けて集めていたエネルギーをドラゴンに向けた。
キュルルルルッーー
7枚の剣が高速に回転し、禍々しく赤白い電流が走った。直後に黒い柱と赤い光が空に広がる。石人形の手から発射された赤黒い光線は黄金の竜を捉え一直線に飛ぶ。
竜の目の前へと光線は迫り来る。大きく羽ばたいた竜は光線の上をスレスレに滑空する。
竜を通り越した光線は雲を撃ち抜きパックリと丸い穴を開けた。
翼を内側に折りたたみ一気に落ちるように加速する竜。
石人形は7枚の剣を差し向ける。
剣は一直線に竜へと向かった。
竜は飛来した剣に光線と同じように羽ばたいて交わそうとする。しかし剣は追従するように竜の後方を追いかけ、振り切れなかった。
空中で逃げまどう竜に向けて、石人形はもう一度、赤黒いエネルギーを手の中に溜め始めた。
その様子を竜は赤い瞳に収め、大きく旋回して剣の追従を逃れた。そして後方に回り込むと口からブレスを吐く。
追従していた全ての剣が火炎の息吹の中に飲まれた。
空に火炎の花が咲く、遅れて地上に押し付けるような爆風と火の粉が降り注ぐ。
竜が見せた隙を石人形は見逃さなかった。
竜に向かってチャージが完了した光線を発射する。
それは先ほどよりも早く竜の翼膜を撃ち抜いた。
『ギャァオオオオ!!!?』
空から落ちるように体勢を崩した竜に爆炎の中から飛び出してきた剣が次々と突き刺さる。
『ガァアッ!?』
竜は空から地に落とされた。
落下の衝撃は足元を揺らし、響き渡る重音と押し寄せる風圧に思わず俺は腕を顔の前に掲げ目を瞑った。
「しつこい、ダンジョンモンスター。ここまで追ってくるなんてとんだ執念。モンスターならモンスターらしくしてればいいの。でも、結局は勝てないの」
べるべはそう嬉しそうに笑う。その背後に敵を倒して戻ってきた守護者の姿があった。
「これで邪魔ものもいなくなった」
べるべの声に守護者は俺に向けて手を挙げる。
「これで終わり」
俺は手を掲げシールドを展開する。
「あれ? あれれ? べるべは〜守っていいって言ったけ? おっかしーな〜。約束を守れない子はお仕置きをしなくちゃ」
そう言ってべるべは手元にあった球体を大斧を振り上げた。
「やめっ!」
「ざんねーん! そんなの間に合わないよ」
俺が飛ばしたシールドが届く前にべるべの大斧は球体を潰し斬る。
「あっ?」
しかし、球体を潰したはずのべるべは怪訝な顔をする。
「あははっ。私、あんたのそういう顔が好き」
倒れ伏せていためいが右手を使って起き上がる。彼女の左手はだらーんと身体から垂れ下がっていた。
「何をしたの、めい?」
それは透明な球体では無く、黒くドロドロとした球体だった。
「私にあんたがしたように、私もあんたを出し抜いてやったわ。ざまぁみなさい!」
そう言って高笑いするめいの足元にしがみつくように赤ちゃんはいた。
「死ぬなら早く死ねばいいのに、あぁ面倒くさい。あなたの相手をするつもりはないのに」
「あなたが相手にしなくても私には相手にする理由があるのよ。はな、行くよ」
めいの言葉に答えるように黒い影の巨人は起き上がる。
「ごめんね。離れていて」
めいの言葉に赤ちゃんはめいから手を離した。
「みぃみぃ?」
赤ちゃんはめいを見上げ、何か聞きたそうに声をかけた。
「大丈夫。心配しないで、私は強いだから」
めいは赤ちゃんを見下ろしてにっこりと笑った。その身体はすでに立っているだけでも息を切らすほど満身創痍だった。
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