第27話 番外編 シロツメグサの花冠と車椅子の少女。


夢が示すものは新たな出会いか、はたまた過去の亡霊なのか。


紡がれない物語の細い糸。その先端に夢の物語はある。


かつて、二人の仲の良い少女たちがいた。二人は病院で人生のほとんどを過ごし、治らない同じ病気を抱えていた。

辛い闘病生活。

毎日のように高熱を振り返し、関節の節々が痛んだ。そんな死にたくなるような辛い夜も二人で励ましあって生きてきた。

外の世界に行きたい。

二人で一緒に学校に行きたい。

大人になりたい。

二人のうち茶色い髪の女の子がそう口にするともう一人はそれに頷くように同意した。

病院の中庭が彼女たちの遊び場で、シロツメグサの花冠を作る。

身体を動かすと体調をすぐに崩してしまう二人。二人の体調がいい時だけ、中庭という特別な空間に行けた。

幸せだった。どんなに辛いことがあっても二人なら頑張れた。やる意味もないリハビリだって一緒ならできた。

しかし、空に暗雲が立ち込めるように、二人の間にも影が忍び寄っていた。

茶色い髪の女の子の突然の病状の悪化、献身的な治療も虚しく、弱っていく女の子。

科学的な治療法が効かない今、彼女の命は運と少女の体力だけが握っていた。

雨の降る中、もう一人の少女は中庭で四葉のクローバーを探した。かつてあの子が辛い時にしてくれたように、自分も今できることをしよう。

雨にあたれば、彼女自身も体調が悪くなるのはわかっていた。それでも泥だらけなりながら彼女は四葉を探した。

そして見つけた。

彼女は見つけた幸運を届け、茶色い髪の女の子は笑みを見せた。きっと良くなると彼女は信じた。

しかし、運命の天秤は幸せの方には傾かなかった。

動かなくなった少女の元にすすり泣く一人の少女。

その手には幸運の四葉のクローバーが二つ握られていた。叶った願いと叶わなかった望み。彼女はその時から、もう病院の外へ行こうなんて思わなくなった。

光が消えて少女の世界は暗くなった。

彼女は今日も車椅子の車輪を空虚に回す。生きる意味などもうない。この命の炎が燃え尽きるまで、彼女は病院という籠の中で息をするのだ。


そう思っていた時、明るい楽しそうな声に、ふと知らない病室の前で彼女は立ち止まった。

この部屋は前までは静かだったはずだ。確か自分と同じくらいの女の子が目を覚さないと話す看護師の会話を聞いたことがある。

彼女は病院の中しか行けるところががない。

病院の中を見回るのは彼女が人生を消費する日課だった。

扉は開いていて、そこには自分と同じくらいの歳の女の子が見えた。

その女の子はシロツメグサの花冠をつけていた。それは奇しくもあの子が彼女自身に作ってくれたものと同じ編み方をされたものだった。

それを見た瞬間、彼女の中に激しい怒りが芽生えた。そしてその花冠を何よりも壊したくなった。

彼女の胸で紫色の何かが揺らめき、人の幸福がどうしようもなく憎くて仕方がない。彼女はギリリッと奥歯を噛み締めてその場を立ち去った。

初めてあった少女に恨みを抱きながら。


これが鳳凰院めいと大分ようじの出会いである。

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