ムカつく

エリー.ファー

ムカつく

「たとえ、君が天邪鬼でも、僕は君のことが大好きだよ」

「別に好きでいてほしくはないんだけど」

「何を言っているのかな。僕は、君のことが大好きだよ」

「私は嫌いになって欲しいと思ってるけどね」

「ははっ、その願いが叶うことはないね。残念だったね。可哀そうに」

「可哀そうだと思うなら、私の願いを叶えてよ」

「僕は、君を追いかけ続けるよ」

「それは、もうストーカーだよ。キモいよ」

「キモいキモくないの話ではないのだよ。絶対に君のことを追いかけまわしてやるんだ」

「キモいキモくないの話だって」

「とにかく、君は僕から逃げることはできないのさ」

「逃げたいなぁ」

「逃げてみればいい。残念ながら、僕は君のすぐ後ろにい続けるだろうけどね」

「私は、あなたのことがそこまで好きではないの」

「君の考えに左右されるような僕ではないんだよ。僕はね、僕の思いが最優先なんだ」

「なんて迷惑な思考」

「でも、そのおかげで君は幸せになるんだ」

「なんで、そう言いきれるの」

「冷静に考えてみればいい。僕は君のことが好きだ。君は僕に愛される。愛される、即ち、幸せ」

「単純すぎる」

「でも、それ以上のものも存在しないけどね」

「あるよ、色々」

「例えば、どんなものがあるの」

「まぁ、すぐには出てこないけど」

「君って、本当は僕のことが好きなんだろう」

「なんで、そういう考えになるの」

「僕が、君のことを好きだからだよ」

「気持ち悪いよ、普通に」

「僕は、普通に君のことを愛してるよ。本当だよ」

「あなたの思いは伝わっているけど、それって、どうなの」

「どうって」

「押し付け以外の何ものでもないっていうか」

「愛は押し付けだよ。でも、素晴らしいものだろう」

「素晴らしいものかどうかは、私が決めることであって、あなたが決めることではないでしょ」

「でも、愛だよ」

「愛ってことは知ってるけど」

「じゃあ、十分でしょ」

「十分ではないでしょ」

「よく分からないよ」

「なんで分からないの」

「だって、僕は君のことを愛してるんだよ」

「愛してることは分かってるの。それは伝わってるの」

「だったら、いいじゃん」

「だったら、いいじゃん、とはならないよ」

「愛はすべてを肯定するんだよ」

「愛が色々なものを肯定するのは分かるけど、すべてではないよ」

「愛って万能だよ」

「そう思いたいことは分かった」

「僕が愛を知ったのは、君のおかげなんだよ」

「それは、どうも」

「でも、それだけじゃないんだ。誰かを愛するってことが、僕のことも幸福にするんだよ」

「へぇ」

「繰り返されるのさ。愛して、結果、愛されて、また愛して、また愛されて」

「愛って、そういうものなんだ」

「そう、そのことも学んだのさ」

「でも、私は別にいいかな」

「どうして、そんなことを言うんだよ。凄く素敵なものだよ。愛って、最高だよ」

「あなたにとっては、ね」

「君にとっても、だよ」

「どうして、そこまで私に構うの」

「僕は君のことが大好きだからだよ」

「私が両脚を失ったのに」

「大好きだよ」

「バレリーナとしては死んだのに」

「君は生きているよ」

「皆に、綺麗な脚だって褒めてもらっていたのに」

「足が綺麗なんじゃなくて、君が綺麗なのさ」

「私って、天邪鬼だし」

「たとえ、君が天邪鬼でも、僕は君のことが大好きだよ」




「先生、あの患者さんとお見舞いに来た人、良い感じですね」

「あぁ。そうだな」

「喜ばしい限りです」

「それを鑑みても」

「はい」

「幸せそうで、ムカつくなぁ」

「やめましょう」

「悲劇を乗り越えて愛し合う二人」

「ロマンチックですね」

「ムカつくなぁ」

「先生」

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