第5話 次は祖父
その日からアマリアは監禁されることになった
セレスタンからアマリアの事を聞いた前侯爵は、
「お前があんな下らん女と結婚するから大事な跡取りがおかしくなったのだ」
とセレスタンをも責めた。そういう父にセレスタンは思わず
「アマリアのせいだけですか? ノエルを追い詰めていませんか?」
ノエルが先ほど前侯爵を見てびくっと体を震わせていたのだ。
「そんなことするわけはないだろ!」
「父上ならあり得ますよ! 以前だって……」
「おまえ! あいつの事には触れるなと言っているだろう!」
「止めてください!」
前侯爵夫人が耐えられず叫ぶ。
夫人は何も知らなかった。ただ、本当にリュカの疑いを晴らすために辺境伯のもとに送り出したと思っていたのだ。
後から夫が息子を犠牲にしたと知った侯爵夫人は、リュカの事を思い泣いていた。愛情に偏りはあったが死んで嘆き悲しむくらいの愛情は持っていたのだ。後悔に苛まれている夫人は、リュカの事が会話に上ると気持ちが耐えられず、狼狽えてしまう。
「とにかく、これからはあまりノエル関わらないで下さい」
セレスタンはノエルを抱いたままサロンを後にした。
ある日、父親の部屋から出てくるノエルと会った。
「ノエル! 父上から呼び出されたのか⁈」
「……うん」
「大丈夫か?」
ノエルは涙をぽろぽろこぼしながら
「……大丈夫」
「そんなことないだろう? 何があった?」
「おじい様は……優しいよ。可愛い、奇麗だっていっぱい撫でてくれるよ。僕が悪いの……せっかくおじい様が僕のお胸やお尻可愛いって撫でてくださるのに……気持ち悪くなる僕が悪いの」
そう言ってセレスタンにしがみついて本格的に泣き始めた。
「な……そんな馬鹿な」
実の息子を思い通りに育たなかったというだけで冷遇し、挙句の果てに殺した男。
自分も弟に嫉妬して、罪をかぶせた。しかし、父が殺したと知った時、弟に対する懺悔の気持ちと後悔で打ちのめされた。
それ以降、真っ当に生きよう、妻と息子を大切にしようと思ってきた。父親もさすがに反省し、心を入れ替えたと思っていたのに。……何よりも大切な息子の体ばかりか心まで穢すとは!
怒りのあまり、めまいがしそうだった。
「もう二度とお前はおじい様に会うことはないからね。お父様に任せなさい」
「……うん。ありがとう、父上」
(これで二人目)
セレスタンは前侯爵をアマリアを監禁している牢まで連れてくと思い切り殴りつけた。
その勢いに飛ばされて前侯爵は無様に冷たい床に座り込んだ。
「何をする!」
そう叫ぶ父親の体を今度は足で蹴りつけ、牢に放り込んだ。
牢にいたマリアが驚いて
「あなた、どういうことですの⁈」
「こいつはこともあろうにノエルを! こんなことならリュカを陥れずにこいつを突き出すべきだったんだ!」
「……リュカ様を陥れる?」
「ああ! あの薬物製造に関わっていたのはこの男と……私だ! 何も知らないあいつに罪をかぶせて家を守ったのだ!」
「そんな! そんなこと! あなたが言ったのではありませんか! リュカ様が犯罪に手を染めていると! だからわたくしは……」
アマリアは鉄格子を必死で叩いた。
「リュカを……自死と偽って殺したのはその男だ」
「え?」
「あいつの冤罪が晴れるのを恐れてこいつが殺したんだ!」
それを聞いたアマリアは絶望した。
アマリアは声が枯れてでなくなるまで二人を罵しり、自分を責めた。いっそ気がおかしくなって何もかもわからなくなりたかった。
同じ牢にいれられた前侯爵を自分の手の力が無くなるまで叩き続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます