3-3 お手伝い
出立のための準備や使わせてもらった珊瑚宮の掃除や後片付けなど、
「ただいま~」
例の如く、花窓の外から明るい声が響く。花窓の外、その先にある欄干にしゃがんだまま右手を振っているその姿に、
そもそもこの宮が建てられている場所もかなり高い場所なため、高い所が苦手な
「あ、あぶないですから! 早く降りてください、
「大丈夫だって。俺、ひとじゃないし。
細身で右が藍色、左が漆黒の半々になっている衣を纏い、美しく細い黒髪は後ろで三つ編みにしていて、その先を赤い髪紐で結って背に垂らしている。左耳の銀の細長い飾りが揺れるたびに涼やかな音が鳴った。
二十代前半くらいの若い青年の姿をしていて、その声はどこか含みがあるが甘く心地好い。金色の瞳は初めは少し怖かったが、今では綺麗だとさえ思う。特級の妖鬼、
「あなたは大丈夫でも、私は無理なんですっ」
「そうなの? 何事も経験じゃない? ほら、立っても平気だし? こうしたらもっと楽しいよ?」
「ひぃぃいっ⁉ なにしてるんですかっ!」
細い欄干の上にすくっと立ち上がり、
最後に欄干から飛び降りると、ふっと口元を緩めて花窓の縁に手を付いて、内側で真っ青な顔をしている
「ホント、面白いよね~、
「····本当に意地悪ですよね、
大声で叫びすぎたのか、どっと疲れた表情で
冗談だとしても本当に止めて欲しい。こっちは一般人で、ただの従者なのだ。
「そういえば、今日はいつもの姿なんですね。なんだか久々な気も」
「うん? だってもう必要ないでしょ? まあ、
「変幻自在なんですね····本当にすごいです」
「まあね。五百年以上生きてるから、大概のことはできるよ。神子の力の影響下にいれば、その眷属はさらに強くなるんだ。守るための力が強くなるのは、好都合」
「
それが仮の姿で、偽りで、周囲にそう思われるために演じていたこと。
本当の姿を理解しようともしないで、視界にすら入れないようにしていた。
「別にいいんじゃない?
「あ····はい。それは、ありがとうございます」
へら、っと照れ笑いをして、
「
「ふふ。よろしくお願いします」
本来、神と名の付く者に対して、ひとは畏怖したり逆に過剰に信仰したりするだろう。しかしこの
「手伝うことはある? 俺、今、すごく暇なんだ」
「じゃあ、これで棚や机を拭いてもらえますか?」
わかった、と
(掃除の手伝いなんて、神子や
神子である
(
もちろん、
途中までは一緒だが、
(そういえば、仙術大会があるんだっけ? 各地の術士や公子たちが集まるんだよね。
この地ではまったく動きを見せなかった
(
ひとりでなにかを抱え込んでいないか、それだけが心配だった。
(どっちにしても、俺は
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