2-28 揺るがぬ想い
鳳凰が去ってもなお、鳴り止まない歓声の中、
「鳳凰の儀はこれでお終い」
その意味を、
「皆、聞いてくれ。この地の朱雀の守護が再び戻った。彼の地で眠っていた神子が今生にて転生し、本来の鳳凰の儀が行われたのだ。以降、この鳳凰の儀は宗主を決めるという間違った儀式を改め、本来のあるべき姿に戻す」
「他の一族は世襲制でその直系の者の中から継承されるが、
(いつの間に····?)
古き伝承、この国の事細かな記録や歴史を知るのも白獅子となる者の役目で、
(
あの神秘的な朱雀の降臨によって、その直前までのびていた者たちも今は目を覚ましており、その現実を思い知らされる。この地の守護聖獣が認めた者を、いったい誰が咎められようか。
彼らの中で、
そんな中、内心動揺していた
「俺は、この地を豊かにしたい。平等にしたい。皆が普通に暮らせるようにしたい。そして民を守るために在る本来の形に、一族の意識を戻したいと思っている」
この二年で少しずつだがそうなるように努力してきた。しかし、いくら
「だから信じて欲しい。俺たちは変わる。皆の期待を裏切らない。そのためにも、俺も皆の話を聞く。俺が間違ったことをしたら、皆で正して欲しい。俺たちは良くも悪くも、この
その場に跪き、
「
「····俺も、少しくらいなら貸してやってもいいぜ」
それくらい、
それに対して、
(それが正解。あなたがそいつになにかしてあげる義理はないし、たぶん届かない)
どうしたものかと模索していた
「
(あいつ、なにをする気だ?)
あの一瞬の隙に、
観衆の誰もが舞台に集中する中、短い女の悲鳴が響く。それに気付いた者がさらに驚いた声を上げ、周囲の視線が一斉にある場所へと注がれた。
「
「駄目よ、離れていなさい」
でも! と側近の宮女、桃色の上衣下裳を纏った
「ぜんぶ、この女のせいだ! 女狐が!」
あの
(まさか、馬鹿なこと考えてるんじゃないよな?)
眼が合ったままの
「俺は、この女に唆されたんだ! 俺は悪くない! 悪いのはこの女だっ」
もはや
「
「
不安そうに
(俺が、誰も傷付けないで、って言ったから?)
そう思っていた
そんな
「あはは! よく見ていろ! この女は人間じゃない、女狐でもない! 人間を殺し喰う恐ろしい妖鬼なんだ! 俺がこの手で証明してやる!」
振り翳していた刃物が、勢いよく
「
泣き叫びながら無謀にも飛びかかろうとしていた宮女に、
ぼたぼたと地面に零れ落ちていく鮮血に、周囲の者たちも思わず目を覆っている。動揺した
「ぎゃあぁああ! 腕! 俺の····俺のっ」
そして目の前で血の付いた刃を振る
「あの妖鬼の存在を赦すのか! お前も!
「いい加減にしろ。その眼でよく見て見ろ。どこに妖鬼がいる? お前が斬り捨てた者がなにかもわからないのか?」
凍るような眼差しと冷たい声で、
「馬鹿な····そんなはず······がっ!?」
妖鬼は弱るか死ぬと本来の姿を現す。しかしそこで絶命している女は、いつまでもあの美しい女のままだった。
目の前の事実に呆然としている中、頬に強い衝撃がはしり、
目の前に立ち塞がるその者は恨みに満ちた目で拳を握り締め、足元に落ちていた刃物を震える指でゆっくりと拾い上げた。
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