2-25 仕掛ける
『頭領、奴ら妙な動きを始めたようです。これ以上近づくと気付かれそうなので距離を置いているんですが····なにか地面に、』
符から聞こえていた声が急に途切れ、
「どうしました? 何か問題でも、」
『奴らがなにを仕掛けたのかわかりました!』
途切れたと思った声が、何事もなかったかのように聞こえてきたと思えば、その声は焦りからか先程よりも早口になり、事の重大さを物語っていた。おそらく、目の前の怪しい動きをしていた者が離れた隙に、そこまで一気に距離を縮めたのだろう。
『微量の火薬が入った袋と
「落ち着いて。他にも設置されている可能性があります。まずはそれらを見つけ、できるだけ回収すること。無暗に符は剥がさず、私のところまで持って来てください」
何人かが同時に返事をする。それを聞いていた
「これは黙って見ているわけにはいかなくなったね。
白獅子である
「白獅子殿や
相手もまた、自分たちの仕掛けた物が回収されているとも知らないわけだから、自信満々に告げるだろう。それを信じれば最後、脅しは成功することになる。
「火薬を回収し、
規則の中に火薬や毒の禁止事項がある。
「あの火薬以外にもなにか仕掛けていないという、確信も持てません」
「····ああ、だから
では、行きましょうと
自分たちにできることを、する。
******
少し前まで皆が座っていた観覧席から
(さっきの奴らが何か仕掛けたってことか。長引かせるのもよくないかもな)
観覧席で不自然な動きを目にし、
(あのひとが動かないのは、合図かなにかを待っているのかも)
(あいつら、本気でやりあってるけど····本来の目的忘れてないか?)
最初こそ周りを蹴散らすために派手にやっていたが、今はもうふたりの邪魔をする者もいない。そうなると、元々ふたりに流れる
やれやれと
(
横に立つ
(このままあちらの思惑に合わせる必要はないと思うけど····朱雀の神子は、あくまで向かってくる者に対して身を守ることを許されている。自分からなにかをするのは規則に反してしまう)
(あなたに任せるよ、)
相手がこちらを攻撃するように仕向けるには、どうしたらいいか。これはもう、相手を煽るしかないだろう。
「おじさんたち、もう遊んでくれないの? さっきまであんなに遊んでくれたのに!」
おじさん、と呼ばれた
「あれ~? もしかして、
うーん、と人差し指を頬に当てて、
ぴくぴくと
「朱雀の神子の分際で、生意気な!」
「おい、やめろ。挑発に乗るな」
「俺たちが弱いだと? 笑わせるな! 本来の力の半分も出していない。そんなこともわからないくせに、いい気になるなよ!」
「おい、止めろと言っているだろう! お前たちは俺の指示に従っていればいいんだ! そうすれば俺が宗主になった時に····」
言っている途中で
「ああそうだったな。だが、お前がどんな手段で宗主になろうとしているのか、他の奴らが知ったら、今後、誰一人としてお前の指示など聞かないだろうし、裏で笑われるのがオチだぜ?」
思った以上に内輪揉めが大きくなり、彼らの不満が大きいことを知る。
「おじさんたちって、仲良しじゃなかったんだね! じゃあなんで、わざわざ弱いふりをする必要があるの? 強いのに、どうして戦わないの?」
男はぶんと勢いよく邪魔なものを投げ捨てると、ころころと勢いよく転がった
ひとり残された
彼らは即席の協力者で、元々自分を宗主にするために集まってくれていた者たちは、早々にふたりの戦いに巻き込まれて場外へ飛ばされていたのだ。つまり、彼を慕う者はもうこの舞台の上には存在しないということ。
くそ! と心の中で悪態をつき、その原因を齎した神子を仰ぎ見た。気付けば花嫁衣裳を纏った朱雀の神子が、彼の手の届くところにいる。
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