2-23 嵐の前の静けさ
ほとんどは
それを目の当たりにした者たちの内、数人が別の手段を取ることはわかっていた。別の手段とは、朱雀の神子を捕まえること。この儀式において、宗主となるための条件は、最後に朱雀の神子と共に舞台の上に立っていた者、なのだ。
(やっぱりこうなるんだね······手加減する余裕はないかも)
間違っても殺めるということはないが、全治一ヶ月くらいの怪我を負わせてしまう可能性はあるだろう。
「大人しくしていれば、俺たちも手は出さないさ。ほら、こっちへ来るんだ」
「おい、聞いたか? 今回の朱雀の神子は宗主のお手付きらしいぜ?」
「そうなのか? じゃあ宗主から奪うのは朱雀の神子じゃなくて、宗主の女ってことか?」
にやにやとして嫌な表情に、
そんな中、その内のひとりが無理矢理腕を掴もうと手を伸ばしてきた。しかしその瞬間、その腕と身体が勢いよく後方へと弾き飛ばされる。
「え? な、なんだ、今のは?」
その場にいた数人の視線が、飛ばされた男に注がれる。彼はすでに場外でぐったりとしており、意識はないようだった。
『汚い手で
そしてその視線はゆっくりと朱雀の神子へと戻される。彼らの視線から、こんな細腕で弱そうなのに、もしかしてやばい奴なのでは?という心の声が聞こえてくる。
「こいつ、今、なにをしたんだ?」
「俺には触ろうとした瞬間、あいつが弾き跳ばされたことしかわからなかったが、」
「えっと、私に触れると危険なので、近づかない方が身のためですよ?」
ふふふ、と女性らしい仕草で口元を袖で隠し、面紗で表情が見えない分、大袈裟に演じてみせた。正確には自分に近付くと
(もうなんでも有りなのね。まあ、私があそこにいたら同じことするかもしれないから、なにも言えないけど)
そんな様子を眺めていた
だが彼らは自分たちの力を見誤っているのか、数なら勝てると思っているのか、怯みながらも再び神子ににじり寄っていた。
知らぬが仏というやつだろう。
「よく考えてみろ、相手はひとりだ」
「朱雀の神子が
「それに、宗主が離れている今がまさに好機だろう。捕まえて
どうやら彼らは
(自分たちで色々とバラしちゃってるけど、いいのかな?)
いいんじゃない? と
少し離れた場所にいる
仕方ない、と
(白虎、
その瞬間、
「な····なんなんだ······これは······っ」
「か、身体が······!」
手加減はしたつもりだが、思っていた以上に強い力が発動していた。男たちは見えない力に底知れない恐怖を覚え、抵抗する気力も失せてしまっている。先程の
『あなたが気にすることないよ。今の内にここから離れよう』
うん、と
その後も能力を使ってきた者に対して
思いの外、
ふたりはどさくさに紛れて辺りにいる者たちを蹴り倒し、同時に炎を放つ。それに巻き込まれた者たちも次々と脱落していった。
「やっぱりふたりはすごいね! 息ぴったりだよ」
『
不貞腐れるような顔をして、
そうこうしている内に、あんなに大勢いたはずの
やはり、
(なんだろう、嫌な予感がする)
そこまでの危機というものが今のところなく、逆にそれが静かすぎて不安を覚えた。
考えられるのは
だが、その視線の先が何度か観覧しているひとたちの方へと向けられているのを、
そして、そのなんとなく感じていた嫌な予感が、現実のものとなろうとしていた。
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