2-22 開始
鳳凰舞が終わると、宗主である
そのほとんどが民たちの歓喜の声だったが、当然だろう。この会場にいるのは
しかも練習とは違い、大勢の人々が見守る中で舞うのだ。痴れ者と名の知れた
「平気か?ここからが本番だ。少しでも休んでいた方が良い」
さすが
「うん、ありがとう。俺も小さい頃からちゃんと修練に参加できていたら、ちょっとは体力もあったのかも」
「不遇だったからこそ、君は今の君になったのだろう?悔やむことなどないさ」
「それに、修練をしてその細腕が筋肉で太くなっていたらと思うと····いや、止めておこう。どこもかしこも細くて美しい君のままでいてくれ」
「
むぅっと頬を膨らませて、
そんな余裕の会話をしている内に、円状の舞台の周りにひとが集まり始める。ここからは無駄口を叩いている暇はないだろう。
その中には
「おそらく、この先は予定通りに事が進むとは考えない方が良いだろう。君は自分の身を守ることだけを考えてくれ。余裕そうに見えるだろうが、俺も器用な方ではないのでね。しかも
あれでも日々修練を怠らず、手練れと言っても良い者たちばかり。上下関係は年齢ではなく、その力がすべてである
故に、この鳳凰の儀はそれを民たちの前で知らしめる絶好の機会なのである。最後に朱雀の神子と共に立っていた者が、次の宗主となる。間違った鳳凰の儀ではあるが、血気盛んな一族たちにとって、これ以上の舞台はないだろう。
「これより、鳳凰の儀を始める。参加者は速やかに舞台の上へ」
席から立ち上がった
今以上に良くなるとすれば、やはり
「皆、この儀式の規則は承知の上であろうが、確認の意味も込めて説明させてもらう。ひとつ、相手を殺すことは禁ず。ひとつ、朱雀の神子を殺すことは禁ず。ただし、予期せぬ
その規定はかなりざっくりとしていたが、要は殺すことや死ぬ可能性の高い道具を使用することは禁じられており、事故、つまり"不測の事態による死亡"に関しては罰せられるが極刑にはならない、ということだ。
(この規則、誰が考えたんだろう。色々と問題がある気がするけど····)
「皆の健闘を祈る。では、これより開始する!」
老師の合図と共に、けたたましい銅鑼の音が三回響く。それと同時に、舞台を囲む者たちの雰囲気ががらりと変わったのを感じた。舞台の上に数十人が次々と乗って来る。それでも余裕があるくらい、この舞台は広く、闘技場という名に相応しい盛り上がりに圧倒された。
しかし、その数十人の内、約半分が一瞬にして舞台から弾き飛ばされる。
宗主に一矢報いるどころか、指の一本も触れる前に場外へと
(あいつ、やっぱり
宗主の身内や、宗主に手を貸す可能性のある者は参加できない。それを訴えればこの舞台自体が無効となるだろう。それはそれで困るわけだが、こうなることはなんとなく予想はできていた。
あとでこの件に関して問い詰めるという材料になったことに満足していたのだが、それも雲行きが怪しくなる。
(は? どういうことだ?)
金属同士が激しくぶつかり合い、何度も交わされるその音は、心地の良い音色にはほど遠い。
(やはり、
ならば、好都合だ。当初の予定通り、奴らを勝手に戦わせて満身創痍にし、漁夫の利を得る。これが最高の終わり方だろう。
炎が舞い上がる。
にやり、と
(これは俺にも運が巡って来たか? このまま隙を見て朱雀の神子を奪い、最後まで舞台の上に立っているだけで、俺の勝ちだ!)
そして宗主となり、
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