2-20 誰かの未来のために
二年に一度行われる鳳凰の儀は、
それは、次の宗主の座を巡る、別名、"
鳳凰の儀の始まりを告げる、宗主と朱雀の神子が舞う鳳凰舞。本来は転生を繰り返していた神子が、四神である朱雀との契約を結び直すために行ったのが始まりである。
その後、二年に一度、朱雀の陣を強化するために行われており、朱雀と共に舞を舞うことで、陣の効力を保っていた。
しかし神子が
そんな中、ある代の血気盛んな
朱雀、
そもそも誰もその姿を認識できないので、なにを言ったところで無駄だろう。
「私の
花嫁衣裳の上に纏っている、金の糸で描かれた鳳凰と美しい花の模様の赤い羽織をそっと整えて、愛しい
鳳凰の儀の前に、朱雀を祀る
これは長年続く儀式的なもので、今まで
それはもちろん、その姿が見える者がいなかったことと、本来の鳳凰の儀ではないものに関わる義務もなかったからだ。だが、今回は違う。
「うん、俺、頑張るよ。本来の鳳凰の儀を再現してみせる。でも一番の見せ場はやっぱり四神である朱雀だから、
「ああ、君が望むようにしよう」
妖艶で美しい
そう、
それだけでも、数百年ここで待ち続けていた甲斐があった。それはどの四神も同じ気持ちだろう。
あの日からずっと、自分たちの主が目覚めるのを、待っていた。
「
直視することすら恐れ多い存在であるのに、隣にいる
「はい、全力を尽くします。これは都合の良い話かもしれませんが····朱雀、
「そのつもりだ。それが
それくらい、
(
話には聞いていたが、
けして良いとは言えない噂もあり、そういう印象が強かったため、四神奉納祭でのあの登場の仕方は、確かに強烈だった。
(まさか、正真正銘のあの
しかも、こんな感情を抱くことになるとは、自分自身予想だにしなかった。すでに断られているので希望はないが、この儀式の間だけは自分だけのものなのだ。鳳凰の儀が成功すれば、この地を離れ、次の地へと旅立つだろう。逆に、成功以外の結果は赦されない。
「
朱雀宮の中に設けられているその広い舞台は、遠くからでもよく見え、ひとが大勢集まっている様子が窺えた。この儀式の時だけは、
「前にあそこに立った時は、俺がこの地を一族を根本から変えてやろうと思っていた。くだらない争いを抑え込んで、そのせいで苦しんでいる民たちを救いたかった。自分たちのような行き場のない子供が、少しでも減らせたらと思っていた」
うん、と
それが
「今は······そうだな。これから変わっていくだろう一族の未来を、君に見せたいと思っている。どう転ぶかはわからないが、この鳳凰の儀を本来の儀式に戻し、朱雀の存在をこの地に住む者たちの希望にしたい。一族が本来守るべき者たちを守れるよう、民が俺たちを遠慮なく頼れるよう、これを礎として築いていきたい」
そう言って、
「俺も、そんな
「怖くなどないさ。俺がいるからな」
ふっと口の端を上げて、いつもの嫌味っぽい笑みを浮かべる
「では、そろそろ行こうか」
「うん、行こう!」
ここから先は、頼れるのはお互いだけ。
鳳凰舞を舞った後、それは始まるのだ。
そして、それぞれの思惑を胸に、待ちに待った舞台の幕が上がる――――。
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