2-15 憧れ
遠目で見てもかなり大きく見えていたが、近くで見るとその三倍は広く大きく感じた。確かに、この舞台の上で
「
「いえ。なにか理由があるんですか?」
確かに、
正直、華守である
「毎年、
仙術大会といえば、武芸の部と符術の部が設けられ、各一族から選ばれた、数名の若き術士たちが実力を競い合う。
十五歳以上二十歳未満の術士がその資格を持っており、公子もそうでない者も、立場など関係なく実力を発揮できる場でもあるから、これが実質の格付けとなる。
実は三つ上の兄である
「もしかして、三年前の一位って、」
「ああ、どちらの部も
しかも自分は弟と競う気がないというのと、
「
(あれ? そういえば
しかし、あのいつも手に持っていた大扇の
地面にめり込むほどの重さがあるあの大扇を、片手で普通の大扇と同じように扱っていた
もちろん、あの黒蟷螂との戦いで術式の扱いに長けているのも知っていた。なので、どちらかと言えば符術や術式が得意、という意味だったのだろう。
「つい先ほど、
「え、俺が、ですか? あ、でも
「ああ、今年からは宗主の代理で彼らの師兄として、指導する側になるそうだよ」
実際、
「ちなみに
そこには、腰に刀剣を下げた青年が音もなく立っていた。彼は表情が硬く、秀麗な容姿のせいか冷淡に見える。しかしこの数日の間に
長い黒髪は頭の天辺で括って銀色の髪留めをしており、その朱色の瞳は
「さあ。どうでしょうね。出たことがないのでわかりません」
しかし、二年前の鳳凰の儀では、
「本気で、
「そうでなくては意味がないでしょう。私が彼と
やはり、と
(
本来の彼は、ものすごく熱い青年な気がしていたのだ。最初、反目したと耳にした時は驚いたが、よくよく話を聞いてみたらそうではなかったし。何を考えているかよくわからないひとだったが、ようやくここにきて彼の形が見えてきた気がする。
「そうだったね、君はそういう子だった。野暮なことを訊いてすまなかったね、」
穏やかな笑みを浮かべて、
鳳凰の儀まであと五日。
何が起こるかは、開けてみなければわからない箱の如く。
(今頃、
赤くなったり青くなったりしている
幼い頃から、彼の成長は見ていて楽しかった。不貞腐れて嫌々やっていた姿も。いつからかやる気を出して真面目に取り組むようになった姿も。
この子のその実力は、まだまだ伸びしろがある。なにより、物事に対する慎重さと誠実さが
暁色に染まり出した空は、今日もまるで青が燃えているようだった。
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