2-13 豊緋の理屈
その中でのひと際目を惹く大きな邸がある。そこが、
十年前。
その村はどこからか群がって現れた大量の
あの時、宗主がもっと術士を派遣してくれていたならば、結果は違っていたかもしれない。
それ以降、その無謀な命を下した宗主に恨みを募らせていたのだが、あの謀反が起こり、行き場を失った恨みは次の宗主へ。鳳凰の儀で晴らそうと思った矢先、その宗主も
前宗主は謀反を企てた罪で死罪。それに関わった者たちも同じく処された。まさか三人の内ふたりの老師たちも、それに関わっていたとは思いもしなかったが。
「
邸に集まった者たちは、鳳凰の儀を失敗させる事を目的として動いていたのだが、どの計画も上手くいかず、挙句、朱雀の神子を攫うために手回しをした、あの
他の協力者。
だから、彼女の言うことを聞かずに、単独で命を下したのだ。しかしそれがすでにバレているようで、この後呼び出しを受けていた。適当な理由は用意してあるが、はたして逃げ切れるかどうか。
「
「なにか企んでいるのか····それとも、
「
ならば、と
「そっちは勝手にやらせておけばいい。俺たちは残った方を叩けばいいだけだ。宗主になれるのは、朱雀の神子と共に、舞台に最後まで立っていた者、だからな」
ふたりがやり合えば、どちらも無傷では済まないだろうし、体力も削られる。勝負が付いた後、満身創痍のどちらかを潰す。それ以上楽なことはないだろう。
「そこからは、我々の同盟も解除。この中の誰が宗主になっても恨みっこなしだ」
鳳凰の儀を失敗に追い込むという、当初の計画はすでに破綻している。ならば、どんな手を使ってでも、あの
「それに、こちらには
この反対勢力を利用して、
そんな、一見くだらない目的のために動いている。だがそれが、彼の復讐なのだ。
例えば、宗主になって一族を導く、とか、この地を妖者から守る、とか、豊かにする、とか。そんな崇高な理由はひとつもない。
行き場を失った恨みを晴らすため、それだけのために周りを巻き込んで、こんな回りくどいことをしているのだ。
皆が帰った後、その足で
「
思った通り、
「申し訳ない。この件に関しては俺も関与しておらず、事を起こそうとした者たちも行方がわからないため、こちらも困っているところなのです」
「あら、そうなの? 私が調べたところでは、あの"福寿堂"が関わっていると聞いたのだけれど?」
「朱雀の神子は、無傷でここに挨拶をしにきたわよ? ある意味、宣戦布告ともいえる言葉を私に言って来たわ」
「というと?」
くすくすと、楽し気に
「どんな卑怯な手でこちらが来ようが、必ず
「朱雀の神子ごときが、戯言を!」
まったくその通りね、と
「ならば、こちらもどんな手を使ってでも、あいつから宗主の座を奪い、生意気な神子に思い知らせてくれよう」
「それは、頼もしいですね。さすが
ふたりでこれからの動きの詳細を話し合い、自分の思うように進んでいることに満足した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます