2-8 銀朱の楽しみ
ちょうど角を曲がった所で、赤い花嫁衣裳が何もない空間から飛び出てきたので、幽鬼にでも出くわしたかのような顔で、
「いや、門があるんだから門から出て来いよ!」
「あ、
ふわりと舞い降りるように地面に足を付くと、
まだご機嫌ななめのようだ。
「交渉成立だよ。一旦ここから撤退して、次の作戦に切り替えよう」
「本当か!? 人間ならまだしも、よく特級の妖鬼と交渉できたな」
「俺と
「わかった」
傍らに無言で立つ
「
「
「うん、名前を呼ぶ時は、一番に
「じゃあ、夜に珊瑚宮で合流しよう」
名残惜しかったが、次の行動に移すのが先決だ。四人はそれぞれの目的地へと別れ、役割を果たすために動き出す。
******
あとは
「担ぎ手に扮した者たちの死体は、こちらで葬ります。彼らは運が悪かった。さらにその素行も褒められたものではありませんが、死人に口なしですから。せめてもの同情心で弔ってはあげましょう」
正直な話、そんな義理はないが、彼らは作戦の犠牲者でもあるので、仕方なく指示を出す。
福寿堂に戻り、次の段階へと駒を進めるのが優先されるが、どうも今回は予測通りにいかないことが多い気がする。
「それにしても、朱雀の神子様の行動力には驚かされました」
歩きながら後ろにいる
「すみません。計画がころころと変わってしまって、ご迷惑をおかけします」
「いえ、いいんです。そういうのが楽しいんですよ、私は。予測を上回るような事が起きれば起きるほど、ね」
交渉が成立する確率をかなり低く予測していただけに、この結果は本当に驚きである。まさか敵側の黒幕を味方にするなど、誰が予測しただろう。しかも相手は特級の妖鬼ときた。そんな存在がこの地に居座り続けていたこと自体、信じられない事でもあるが。
「"朱雀の嫁入りの儀"は、まあ、途中で邪魔が入りましたが、神子様が
「そうですね。相手も鳳凰の儀までは、もうなにもできないでしょうし。俺たちもこの後は珊瑚宮に戻って、待機するだけです」
とえあえずは、集まってもらった者たちと
福寿堂に戻ると、店に残っていた
「
「待っているのは、本当に苦痛です! 心配でどうにかなってしまうところでした」
「まったく、大袈裟だな。夜になったら俺たちも戻るから、それまでに支度をしておいて欲しい」
はい、と
そうしていつの間にか時間は過ぎ、
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