1-29 花嫁衣裳
真っ赤な花嫁衣裳の上に、金の糸で描かれた鳳凰と美しい花の模様の赤い羽織を着せる。最後に顔を隠すための紅蓋頭を頭から掛け、
裾も袖も特に手直しは必要なさそうで、時間が余ったのでついでに化粧を施し、髪形も簡易的にだが結い上げた。あとは髪飾りを付けるだけなのだが······。
「
「
「明日の楽しみにしたいって言ってましたね、」
店の周りを見てくると言って、着替える前に部屋を出て行ってしまったのだ。
「ねえ、変じゃない? 髪の毛もいつもと違うから落ち着かなくて」
「よくお似合いですよ?」
先の方に癖が付いた長い黒髪は、頭の上でお団子にされ、さらに三つ編みをした髪の毛でぐるりと巻かれていた。
いつもは頭の天辺で適当に括るか、左右を三つ編みにして後ろで結び、そのまま背中に垂らすかだったので、
「いいじゃないですか。私も花嫁衣裳の着付けや化粧などは初めてなので、明日の練習ができました。
もっともらしい言い訳をし、
(本当は他に理由があるんですが、それはもちろん内緒です)
あの時、
「すごく綺麗です、
赤い衣裳に
「どうせなら、髪飾りも付けちゃいましょう! 私、下に降りて借りてきますね」
「え? いいよ、これ以上頭が重くなったら困るから、」
部屋に一人残された
******
「あ、あーそうだった!
「はい、あ、でもこれからこの髪飾りを
「だったら、師匠! 師匠が
「それがいいです! ではよろしくお願いします!」
手の中の箱をゆっくりと見下ろし、
臙脂色の仕事着を纏う
(······あのふたり、なにか不自然だったな)
そもそもそんな技術は持ち合わせてはおらず、ただ茫然とあのやり取りを見ているしかなかったのだが。
考えている内に階段を上がりきり、扉の前に立っていた。扉に手をかけ、ゆっくりと中へ入る。
その先に、赤い花嫁衣裳を纏った
「あ、
扉が開いた音がしたからか、
「すまない、声をかけるべきだった」
固まっている
「これを
「あ、
そんな風に
「変ではない」
持っていた髪飾りをそっと髪の左横に挿し、そのまま頬に触れた。
「とても綺麗だ」
その言葉に
「······俺、ちゃんと
困ったようにはにかんで、
目の端の紅が華やかで、目を奪われる。
「鳳凰の儀が終わるまで、俺、
「君は君のままでいい」
「······うん、ありがとう。でもね、
「わかった。だが私が今生で出逢い、傍にいたいと思ったのは、
言って、
触れ合うだけの短い口付けだったが、
口付けを交わした後の
「すまない。こんなことをするつもりはなかったんだが······」
言って、背を向けた
「
ずっと言えなかったこと。
隠していたこと。
今なら。
「俺ね、四神との契約が終わったら、完全な
本当は、怖い。
怖くて、怖くて、どうしたらいいかわからない。
永遠に生き続けるなんて、想像もできない。
「なら、私は、永遠に君と生きていく。あの日からずっと、そうやって生きてきた。君のいない日々を、いつか逢えると信じて永遠ほど。でも、もう君はここにいる。それが永遠なら、何度生まれ変わっても、君に逢いに行ける」
だから、ひとりではない。
君を捜して彷徨っていた日々は、もう、終わったのだ。
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