1-19 逢魔のお節介
螺旋状の炎が消えた途端、支えを失った
その様子に、
離れたと思ったのも束の間、
「契約は果たされた。私は、これから先もずっと、君と共に在る。これ以上の至福はないだろう」
愛しいものを愛でるように、
「
「おっと、いけない。ありがとう、
顔や頭や身体を撫で回していた両手を止め、我に返った
その隙に
「兄さん、
「
「いいんじゃない? それよりも早く、」
わかった、わかったと
途端、ふわりと赤い衣が宙から現れ、そのまま
「特別な羽織だ。朱雀の加護が
金の糸で描かれた鳳凰と美しい花の模様の赤い羽織は、花嫁衣裳の上衣に羽織るもので、これは特別な糸で織られたもの。
鳳凰の儀は、今となっては宗主を決めるための儀式のひとつにされているが、元々はかつての
朱雀の
つまり、婚姻を結ぶようなものなのだ。
そして堂の前で呆然としている、
「じゃあ、そういうことだから、よろしくね」
「外であんたを待ってるひとたちに、絶対に
「······ああ。奴らの眼には晒さないし、髪の毛の一本も触れさせないと誓おう」
ここに来るまではなかった気配が、数人分増えていた。鉄の扉の内側には、宗主の
自分の歩よりもゆったりと流れている
触れれば命がないこの
腕の中で眠ったままの
(こんなに小さくて軽い身体に、俺たちはどれだけの負担を背負わせているんだ?)
そんな時に、この小さな囲いの中で争っている自分たちがどれだけ無能で滑稽なことか。そんなくだらない小競り合いに付き合わせてしまっていることを、今更ながら後悔する。
『この一族は、根本から変えなければ、意味がないのだ』
二年前に老師、
その本当の意味を、今頃、知ることになるとは。
天井まである大きな鉄の扉の前で、
「俺がハメてあげるよ、」
突然後ろからかけられた声に、
その五、六歳くらいの幼子は、自分の腰の辺りにぶら下がっている
扉が半分開いたところで
「やっぱりあんただけじゃ心配だから、俺も一緒に行ってあげる」
その幼子は、にっとその年齢に見合わない不敵な笑みを浮かべて、こちらを見上げてきた。
不揃いな肩くらいまでの細い髪の毛は結っておらず、前髪が長い。
背を向けた時に見えた、腰帯に差している黒竹の横笛。その横笛に付いている藍色の紐で括られた琥珀の紐飾りが、歩く度にゆらゆらと揺れていた。
臙脂色の衣を纏った少年は、その朱色の瞳に
どこをどう突っ込んだら正解なのか、
そこに待ち構えていたのは、真紅の衣を纏った、数人の男たちだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます