1-16 老陽
――――時は昨晩に遡る。
その先にある堂は鉄の扉で閉ざされていたが、
白い髪紐で緩く結んだ、背中の真ん中から先の部分だけ明るい朱色をした細く長い黒髪。右耳から下がっている白と赤の羽根飾りが目立つ。
裾の長い白い衣に腰帯は黒色で、金の糸で鳳凰が悠々と羽ばたいている模様が描かれた、臙脂色の羽織を纏っていた。
彼こそが、この
「
「なんだ、
「見ての通りだよ、」
肩を竦めて、
「麗しい
「
「今回の
「私の
「そう。
遠回しに貶したり褒めたりしながら、
「今の
「嫌われる? この私が? 私の
あんたのじゃないけどね、と
「そうだよ。兄さんは、
「もちろん、好かれたいに決まっている」
「じゃあ、俺のお願い、聞いてくれるよね?」
「
「俺も一緒に兄さんのお手伝いをしてあげるから、安心して任せてよ」
「さすが
******
腰に下げている透き通った朱色の
そ、と肩を抱き寄せられ、
「俺から離れない方が良い。吸い込んだ熱で喉が焼けて死ぬ」
半分だけ開いた扉の先へ足を進める。扉の先はまったく別世界だった。
「間違っても触れないことだ。骨になりたくなかったらな」
「
歩きながら、
何を聞きたい?と
「どうして宗主になろうと思ったの?
「なんでそう思う?」
「うーん。なんだか不思議で」
首を傾げる
「君になら、教えてやってもいい。だが俺のことを知りたいなら、それに相応しい見返りが必要だ。たとえば······」
「たとえば?」
「俺にも君と同じものを見せて欲しい」
それはとても抽象的すぎて、
「そうだな、
「
お願いして、
「じゃあ、約束」
「うん、約束!」
こんな子供じみた約束を、本気でしてくれる者など、今までいなかった。
胸の辺りがじんわりとあたたかくなるような、そんな優しいなにかが、
けれども、繋いだその指は、確かに――――。
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