1-13 君だけを見ている
「
宴会での出来事は、
なぜなら、相手は宗主で、
「
二年前まで、
「········
表情にはまったく出ていないが、
肩と肩が触れ合うか触れ合わないかという、微妙な距離で座るふたりの距離感が、今の心情を表しているかのようだった。
「怒っていないと言えば、嘘になるが··········それ以上に、」
「私は、私が赦せない。怒りを覚えるのは、自分自身に対して」
耳元で囁かれるように紡がれるその低い声に、
抱きしめられたまま、
(
肩口に顔を埋めて、その鼓動を聴く。
こんな風に抱きしめられるのは久しぶりだった。
(あの夢の中で君に逢った時、俺は、)
"好き"という気持ち以上のモノがあることに気付いた。その感情がなにかは、まだ言葉にすることは難しいけれど、いつか、解る時がくるのかな?
「
鳳凰舞は花嫁衣裳を纏って舞うらしい。
一緒に舞うのは
「上手くできたら、また褒めてくれる?」
あの繭の中でした約束のように。
「あとは········そろそろ放してくれると、嬉しいな?」
「
腕が解かれ、そのぬくもりが離れていく。
しかしその視線は
右手がそっと
一度俯き、何かを決心するように
「私だけを、··········見て欲しい」
どこか悲し気な表情で紡がれたその言葉に、
「私は、君以外、なにもいらない」
それはまるで。
「隣に君がいないのは、嫌だ」
我が儘を言う子供みたいな。
「だれにも、触れさせたくない」
けれどもどこまでも真剣で、真っすぐな気持ち。そんな想いを笑う事なんてできない。誤魔化すことも不要だった。
「うん、わかった。俺、
言って、満面の笑みを浮かべた
岩壁に閉ざされたこの地の空は円形。その薄墨色の空に瞬く星は、いつもよりも少なく見えた。灯篭の灯りが風で一瞬途切れそうになるが、小さな種火が再び燃え上がる。
「明日も早い。戻ろう、」
頬から右手を放し、今度は左手で
いつもと同じ、
不安は、ある。
それでもこの手は、いつだって君のためのモノ。
自分と
切れることのない、永遠の絆のように。
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