1-12 友として
あの宗主の突然の求婚により、宴は早々に切り上げられた。
その夜、
あんなことがあったというのに、
気のせいかもしれないが。
本当は稽古が始まる前に、あの話を聞いてもらおうと思っていたのだが、
「······今日は、これで終わりにする。ゆっくり休むといい」
「え? はい。ありがとうございました」
少し物足りない気もするが、
いつも通りだと思っていたのは、間違いかもしれない、と
思い切って、その背に声をかけた。
「師匠、いえ、
その呼びかけに、
今、彼は、とても焦っている、もしくは苛ついている、気がする。
それもこれも、
とりあえず適当な場所に腰を掛け、ふたりは肩を並べて座る。
(う······慣れたと思ったのに、なんか気まずい)
義弟である
後で
「あの宴でのこと、気にしてますよね? あいつ、誰とでも仲良くなるから、見てるこっちは気が気じゃないっていうか」
本当の
「俺、伯父上に一緒に来ないかって言われて、すぐに返事が返せなかったんです。
今までが今までだっただけに、手のひらを返したような態度を取られても、きっと
それに、
「それで心配ないと確信が持てたら、白獅子である伯父上の許で各地を回りながら、今みたいに一族の問題をひとつずつ解決して回りたいって思ってるんです。その旅の中で、縁があればまたきっと逢えると、そう信じて」
だから、もう、答えは決まっているのだ。
今は、まだ、一緒にはいかない。
でも、いつか、理想とする伯父のようになりたい、と。
「俺、まだまだ強くなれますよね?」
「ああ······まだ教え足りないほどだ」
ふっと本当に少しだけ口元を緩めて、
(あいつ······よく、この顔を見て、いつも平気でいられるな)
自分も、少しは彼に認められているという事だろうか。気を許してもらえているなら、嬉しいとさえ思う。
こほん、と咳ばらいをして、
自分の事は話したのですっきりしたし、言葉にしたことで、揺らいでいた心も決意を固められた。
本題、それは、
「それで、どうするつもりですか? あいつ、明日は朱雀の契約のために宗主とふたりで
「あそこには朱雀、
「え? どういう?
「······
「え? あれ以上········
あの距離感も十分におかしいが。
「······それどころでは、ない。
そこまで言って、青ざめる
「と、とにかく、師匠から
「········う、うん?」
突然、肩をがっしりと掴んで捲し立てる
「········友?」
残された
「私だけを········見て欲しい、」
ぽつり、と
「君も、あの時、こういう気持ちだったのか?」
ぐっと胸元を強く握り締める。薄青の羽織の下に纏う、白い上衣が皺で歪んだ。
この気持ちは、なんと言えばいいのか、この辺りが痛くなる。
「君って、
後ろから聞こえてきたその声に、
「········
そこには、腕を後ろに回し、
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