1-11 痴れ者、求婚される
突然立ち上がった
「
その言葉は、
「俺は、あなたが信じられないよ······」
その言葉に、
(所詮、君も··········ただの他人、か)
眼を細めた
その正体を認識したのも束の間、顔を覗き込むように腰を屈めて、
「なーんてね!」
「····················は?」
それは本当に油断していたこともあり、その直前まで胸の中で渦巻いていた様々な感情が、一瞬にして吹き飛んだ。
「ふふ。面白かった? 人を試すのは、俺の方が上だったみたいだね、」
自分のすぐ目の前で腰に手を当てて、満足げに仁王立ちしている
「これは、これは。私も一杯食わされましたな」
「おじいちゃんは、解ってて合わせてくれたんでしょ?」
ほっほっ。と老師は素知らぬ顔で明後日の方向を見ている。
「宗主は、本当に自分が心を預けても良い相手かを、人を試して判断する悪い癖があるので困っていたのです。そういうのは良くないと日頃から教えておるのですが······いやはや、お恥ずかしいかぎりですな、」
「あなたは、そうやって今まで生きてきたんだね。でも信じて欲しい。俺は、あなたを裏切らないし、この役目を最後まで果たすよ」
翡翠の大きな瞳が、
昔から、裏切りと嘘と偽りの中で生きていた
そんな中で身につけた処世術が、人を試すという行為。その見極めの中で、一体何百回と諦めたことか。
「······俺の負けだな。本当に、君は、俺が頭を下げるだけの価値があるひとだ」
「
「うん、よろこんで! ··········ん? あれ? ちょっと待って、」
「
真の朱雀の
「まあ、いいだろう。婚姻というは、お互いの気持ちが大事だからな。だが、俺はそんなに長くは待てないし、誰かに渡すつもりもない」
にやりと自信満々に浮かべたその笑みは、彼の本性だろう。
「こ、婚姻!?」
よりにもよって、婚姻?どうして婚姻?なんでこの流れでそうなる!?
確かに
しかし、目の前の
しかも数人の立会人の前で、だ。
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていましたが、ここまで馬鹿だとは! 自分が何を言っているか、解ってます? 頭は正常ですか? 一回、殴っても良いですか?」
「俺は本気だが? 何か問題でもあるのか?」
「逆に、なんで問題がないという思考になるのかが、私には理解不能ですが?」
ぱんぱんと老師は手を叩いて、皆に自分の方を見るように促す。
「これは、面白い。だが、別に問題はないし、過去に事例もあるから、私は反対はせんよ。この地の宗主たる条件はただひとつ、誰よりも強ければいい。子はできずとも、問題ない。つまり、嫁が男でも問題ないということですな」
「いや········そっちは良くても、こっちには大きな問題が······、」
(
自分があの
その夜の宴は、色んな意味で大問題に終わった。
そして
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