1-10 白鷺老師
客人がいない間に、誰かが勝手に入るということはないだろうが、念の為、無人は避けた方が良いという宗主からの提案だった。
それくらい、今の
宗主である
それとは反して、
宴といっても顔見知りだけの食事会と言った方が正しいだろう。
一方、
「これは、これは、遠路はるばるお越しいただき、ありがたく思います。そちらの公子殿においては、今回の鳳凰の儀を手伝っていただけるとか。申し遅れました、私はこの
丸まった背と、皺だらけの顔。頭の天辺で団子にして括っている白髪と、長い眉、口と顎の髭もすべて白い老人は、にっこりと笑ってお辞儀をした。
この、のんびりとした老人がこの地の政の一切を任されているのだから、ただの穏やかな老人でもなければ、ましてやただの老いぼれでもないことは明白だろう。
「おじいちゃんは、偉い人だよね。この地で一番物知りってこと?」
「ばっ··········
した、が、案の定。
「じゃあ、どうして朱雀の
(
ただの宴として設けられた席だ。静かに食事をして、訊かれたことに答えていればいいはずだった。それなのに、今、ここで話すことが重要なのか?と
一瞬だが、
「ほう。花嫁の失踪事件の事ですか。まあ、確信はないですが、想像はできますな」
「すごい! 物知りなおじいちゃんは、やっぱりなんでもお見通しなんだねっ」
わざと騒がしく身体を動かして、
「じゃあ、おじいちゃんの想像、俺にも聞かせて!」
「
眉間にしわを寄せた
「いいじゃないか。面白い。老師、どうなんだ? あんたはどう思う?」
「宗主、あなたというひとは、どうしてそう、」
「なんだ? 事を荒げるのが好きかって? もちろん、大好物だが?」
「老人の想像をご所望とあれば、致し方ないですなぁ。これはあくまで、想像でしかありませんが、」
線のように細い眼を少しだけ開き、老師は長い白髭を上から下に繰り返し二回撫でた。その動作はやはりのんびりとしたもので、どこかもったいぶっているようにも思えた。
「そもそも、彼ら彼女らは、どういう理由で朱雀の
この
「お金だね」
確かに、身の危険がある役目であり、宗主を決める一大行事でもある。なんの報償もなく引き受ける者など、よっぽどの人格者くらいだ。
「ほっほっ。その通り。見事に役目を放した暁に齎される報奨、何かあった時に遺族に与えられる報償、それは数年は働かなくとも食べていけるだけの褒美。だが、そんなことをしなくても、口止め料という名の同等、もしくはそれ以上の金が手元に転がって来たなら?」
「お金を貰って、いなくなっちゃうね。でも、そうでないひともいるかも。正義感の強いひとたちは、どうなっちゃうの?」
わざとらしく
老師は、にっこりと笑ってその問いに答える。
「その美しい正義感が、予期せぬ死を招くかもしれませんな、」
その答えに、
つまり、何者かが失踪した者たちに金をちらつかせた上で、
それがもし事実なのだとしたら、
そして、この"想像"を、宗主である
そんな中、
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