1-9 隣にいることの意味
騒いでいるのは
複雑な気持ちを落ち着かせて、扉に手をかけようとしたのと同時に、自動で扉が開かれる。
「あ、やっぱり
聴き慣れたその声はどこまでも明るく、
「おかえり、じゃない。なにを騒いでるんだ? 外まで丸聞こえだぞ」
「別にいいでしょ? 少しくらい騒いだって、誰も何も言わないよ」
そういう問題じゃないんだが、と
「どうもしてない。少し暑さにやられただけだ」
「あ、
そうだな、と
「······
珍しく、
「夜の稽古の時に、相談にのってもらいたいことがあります」
わかった、と
あの日、
もっと昔から一緒にいるような、そんな感覚さえあるというのに。
「
「ん? あの姿って、狼の姿のこと?」
「そう、俺、あの姿好き。いつもの
「いいよ。あなたが好きなら、飽きるまでこの姿でいてもいい」
言って、突然身体が灰色の煙に包まれたかと思えば、あの立派な毛並みの黒い狼が姿を現した。
「あの方が鬼と聞いた時、本気で怖いと思ってしまいましたが、あんな風に仲良くされている姿を見ると、全然怖くないんです······これもきっと、
(
でも自分はどうだろう?
いつも一緒にいることが当たり前だった、自分自身は?
それでも一緒にいると誓い、今まで通りの関係でいることも約束した。
守りたい。でも力が足りない。
だからこそ、強くなろうと決めた。
(また、俺は迷うのか?)
もう何回も、そんな自問自答を繰り返している気がする。
隣にいる意味が、理由が欲しいのではなくて。
ただ、最後までこの旅を見届けたいという気持ちが、今は強い。
そんな
「
茶を口に運んでいた
少しして、珊瑚宮に使いの者が訪れた。
鳳凰殿の客間で、宴は開かれる。
そこには、先程顔を合わせた面々に加え、ひとり、老人が増えていた。
その老人は、この
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