1-3 蓉緋
鳳凰殿は宗主と護衛、一部の従者だけが出入りを許されている。ここには妻となる者でさえ、宗主の許可がなければ入れない宮。
そんな宮の構造をよく知っているらしい
建物自体が高い場所にあるため、まるで空中を歩いているような感覚を覚える長い渡り廊下を歩き、
その扉がゆっくりと開かれると、そのさらに奥に置かれた、まるで玉座のような豪華な造りの椅子に、見覚えのある顔の青年が座っていた。
「
「それはどうも、
「そうか、残念だね。では、君たちは私と一緒に客間で待っていようか」
「ですが、宗主、」
側近の護衛だろうか、腰に刀剣を下げた二十代くらいの青年が口を挟む。彼は表情が硬く、秀麗な容姿のせいか余計に冷淡に見えた。長い黒髪は頭の天辺で括り、銀色の髪留めをしている。
朱色の瞳。彼もまた
「平気だ。話をするだけ。彼らは奴らとは違う。俺がどうこうされる理由がないだろう? いちいち口を挟まれると話が進まなくなる。さっさと行け」
「……解りました」
不服そうだが、
「さて、邪魔者はいなくなった」
言って立ち上がり、
「俺は、あなたが跪くような相手ではないです」
「それは違う。君は、俺が跪くだけの価値がある」
二十五歳と、五大一族の中でも一番若い宗主である
故に、過去の宗主たちは粗暴な者が多く、
戸惑いを隠せない
「あの日、君が舞ったあの見事な奉納舞が忘れられない。まさか本当にあの
「許すも何も……あの時、あなたが
目の前の者のことを知らない
もし違っていたとしたら、今、こうしてこんな風に、自分などの前で跪いたりはしないはず。
(あれはどう見ても、本気で面白がっていたようにしか見えなかったが?)
「なんだ、それもお見通しか。さすが噂の第四公子殿は侮れないな」
ははっと笑って、
握っていた手をようやく放してくれたと思えば、今度は頬に触れてきた。油断していた
「ますます欲しくなった」
「さすが、
「え、……どういう意味? ねえ、
後ろから覗き見た
「あ、えっと、俺のことは公子殿なんて呼ばなくていいよ。
君の意のままに、と
この一連の行動と言動に対して、ふたりは彼が何を考えているのか、どういう人間なのか、この時点ではまったく理解することができなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます