1-2 白獅子
朱色の柱で支えられた門の前に、高貴な身なりの男がいた。白い羽織には銀の糸で描かれた一匹の白獅子。羽織の下に纏う衣もまた白で、腰帯も白だが、帯を飾る長綬と短綬は薄青だった。
長い黒髪は上の方だけ団子にして纏め、それ以外は背中に垂らしている。その男はこちらに気付くと、穏やかな笑みを浮かべて手を振って来た。
「伯父上!」
「
「伯父上が
石階段を駆け上がって、いち早く
そんな光景を
「伯父上? って?」
「
(
幼い頃から
(あんな細身で優しい感じのひとが、ひと振りで十体以上の
「君が
四十代とは思えない見た目の若さもそうだが、その全身から放たれる見えない高貴な雰囲気は独特で、それは
その本当の理由を、誰も知らない。
「ようこそ。
門が開かれる。その先にさらに階段があり、その左右には様々な種類の木々や花々が咲き乱れていた。金木犀、
そのさらに先にあるいくつかの建物の中でも、一番高い場所にあるのが、宗主の住まう鳳凰殿だ。白獅子を先頭に
「····
「大丈夫だ」
「······え、」
「君がいつも言う言葉」
「うん! ありがとう、
長い袖で隠すように握られた手と手。あたたかくて、優しい手。
大丈夫。きっと、今回は、誰も、悲しいことにはならない。させない。
「俺は、俺のすべきことをやるだけ」
「私は君を守る。それだけだ」
灰色がかった青い瞳は、ただひとりだけを映している。今までも、これからも。
ふたりはゆっくりと近付いて来る鳳凰殿を見上げる。その名に相応しい緋色の建物は、その所々に金色の鳳凰が装飾されていた。他の建物とは違い、この建物は趣よりも豪華絢爛さの方が強い。
この先に待つものがなんであっても。
絶対に、離れない。
握りしめた指先に、永遠ほどの誓いを込めて。
ふたりは、その一歩を共に踏み出すのだった。
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