彩雲華胥〜轉合編〜
柚月なぎ
第一章 花轎
1-1 岩壁に囲まれた都
こちらの門が、
建物の屋根が見えないほど高く聳え立つその岩壁は、要塞と呼ばれているのも頷ける。その門も見るからに重たく、黒々とした鉄でできているようだった。
術士たちにはあまり馴染みのないものが多く、どちらかといえばそれ以外の者たちの必需品が揃う店が所狭しと並んでいた。鍛冶屋が多いためか、様々な場所から煙が上がっており、見慣れない道具や器具が目立つ。
「気を付けて、」
隙間がほとんどないその人ごみの中、
高台に造られたその宮廷は、この岩壁に囲まれた都の象徴的な建物になっており、正面に見える門を支える二本の朱色の柱が際立って目立つ。
「ありがとう、
「そうだぞ。気付いたら攫われてた、なんていうのは勘弁してくれよ、」
「でもすごい活気ですよね。鍛冶屋さんもそうですが、食材も見たことがない珍しいものがたくさんありますよ!」
「
途中から狼の姿でいるのが嫌になったのか、青年の姿になった
「
振り向いた
「あの高い屋根の上で昼寝でもしてるよ、」
「そっか。じゃあ、用事を済ませたらすぐに合流しようね」
へへっと笑って、くるりとまた前を向いて歩く
その先には長い石段が続いており、それはあの朱色の柱の門へと続いていた。一体何百段あるのだろうと思ってしまうほど遠く感じる。宮廷は岩壁を背に建てられており、そこに咲き乱れる花々の、色とりどりの花びらがここまで舞って来ていた。
木造の趣のある宮廷は、岩壁の灰色によく映える。まるで仙境の絵図のように美しい景色に、
「行こう!」
石階段を弾むように上って先を行く
舞う花びらと、岩壁から覗く青々とした草花が美しいその場所は、どこまでも幻想的で、不思議な雰囲気を纏っていた。
しかし、その陰で暗躍する陰謀があろう事など露知らず。
朱雀が守護するこの地で、新たな舞台の幕が上がろうとしていた――――。
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