第四話 高架下の出会い2
どれくらい眠ってたのだろう、ふと美紅は目を覚ますとリビングには窓から黄昏色の宝石のごとく夕陽が美しく差し込んでいた。薄暗い部屋の壁に掛けられていた時計は夕方の5時を指していた。
兼人を起こさないように手をほどきベランダに出ると空を眺めながらおもむろにタバコを加え火をつけた。
いついらいだろう・・
社会人になってから何年も夕陽をまともに眺めたことがなかった美紅にとっては久々の光景だった。
ゆっくり沈みゆく太陽を見ながら美紅がそんな感傷に浸り半分ぐらい吸い終えた頃だろうか閉めていた窓が開き、ふと後ろを振り向くと目を覚ました兼人が目を擦りながらベランダに出てきた。
「おはよう、みくねえ」
「おはよ、もう体調は大丈夫?」
「うん、もう大丈夫」
「それならよかった。吸う?」
タバコを咥えながらそう言うと兼人にタバコの箱を差し出した。
「うーん僕まだ小6だし吸った事無いからいいかな」
「フフッ、そうだった。君まだ小学生だもんね。ごめんごめん」
笑いながらそう言うとポケットにしまった。
「ねえ、けんってさ好きな女の子っているの?」
「いないけど・・突然どうしたの?」
突然の質問にちょっと恥ずかしそうに答えた。
「ううん、私がけんみたいな年齢の頃は好きな男の子いたし、けんにもいるのかなーって」
「そうなんだ、みくねえは好きな人いるの?」
「もうずっといないよ。最後にいたのが思い出せないぐらいね」
そう言うと吸い終えたタバコを吸い殻入れに入れ、戻ろっかとあくびをしながら言うと兼人の肩をポンポンと叩き窓を開け室内に戻った。
兼人もうんと返事すると美紅についていくように部屋に入りおもむろにテレビをつけた。
「もう遅いしそろそろ帰るけど、けんってさ携帯持ってる?持ってるなら電話番号交換しない?」
「持ってるけど、この携帯でもできる?」
そう言うとポケットから小さな携帯を取り出すと美紅に渡した。
「あーキッズフォンか。どれどれ・・」
そう言いながら一分ぐらいいじり、美紅も自分の携帯を取り出して少し触って兼人の携帯を鳴らすと再び兼人の携帯をいじり兼人に返した。
「携帯に私の電話番号登録したし、もし私に電話掛けたい時はこの〈濱中美紅〉ってところを押してね」
そう言うと美紅は携帯をポケットにしまった。
紙袋を持ちテレビを横切ろうとしたその時テレビが速報でニュースを伝えた。
〈速報です、昨夜起き中丸市で起きた殺人事件。被害者が市内の高校に通う16歳の生徒であることがわかりました〉
ふと中丸市の高校と聞き美紅はテレビを見て一瞬固まった。
「どうしたの?」
「ううん、何にもない。私帰るけど、けんは体調気を付けてね。」
「ありがとう・・みくねえ!」
「ん、どした?」
「その・・また連絡するし今度一緒にみくねえと遊べる?」
「うん、けんが元気になったらいつでも連絡してよ。私休職中だしいつでも大丈夫だよ」
「休職中・・長い夏休み見たいなもの?」
「んん?夏休み?面白い例えだね。そんなところかな」
そう言うと玄関ドアを開けた
「じゃあまた。いつでも電話かけてきてね」
にこりと笑い手を軽く振ると、ドアを閉め兼人の家を後にした。
鍵をかけるとすぐポケットに入れてた携帯を開いた。
携帯の電話帳を開くと一番下に〈濱中美紅〉という名前が出てきた。
「みくねえ、またね」
一人携帯の電話帳の名前を見ながらつぶやくと、大事そうに携帯をしまいまた眠りにつくのであった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます