第27話 お城に連行される!

又も荷馬車が背後から来るが、横を駆け抜ける所で止まる。

少し初老の運転手さんが声をかけて来る。


「兄ちゃん乗ってくか」

「お金が無いんで、乗れません」

(銀貨はないよ、運転手さん)と心の中で思う。


「それならば、なにか食べ物を持ってないか?」

「食べ物?それならこのクッキーではどうですか?」

包みを開けて缶の中から一つ出す。


「オイオイそんな高級な物は銀貨より高いぞ! それなら3枚くれよ1枚は食べるが2枚は家族にお土産だな、さあ乗れ」

クッキーを渡したら、荷台に座らせて貰った。


「あとこれ緑茶です、喉が乾いたでしょう、さしあげますよ」

ペットボトルの蓋を開けて、おじさんに渡した。


「オオ悪いな、確かにクッキーは、甘くて美味いが喉に絡みつく」

おじさんと話しながら、この辺のことを聞く。


聞いた事の無い国や街の名前、そして王都には王様がいるらしい。

この先の街は何処かの貴族の領地で、凄い領主がいるらしいと。

そんな所に行っても大丈夫かなぁ?


俺はまだ此処が異世界だとは思っていない、まずは家に帰らないと。


「おじさん、さっき食べたクッキーは美味しかったですか?」

運転しているおじさんに聞いてみる。


「そうだな〜、俺は銀貨1枚で譲って貰ったが、もしかすると金貨1枚の価値があるかもな、あの美味しさならな!

それとこの食べた味は、昔食べた記憶があるんだ」


やっぱり、食べたことがあるなんて、此処は日本の夢と魔法の王国の中なんだ。

しかし銀貨もわからなかったが、金貨ってなんだろう?

まあ、あそこの城に行けば何処からか絶対に分かるだろう。


「それとそのクッキーは商業ギルドに売りに行った方が良いな、俺は小麦を売りに行くので一緒に着いてくると良いよ」

親切なおじさんは、売り場所まで案内してくれるみたいだ。


「本当ですか、助かります!」

俺はウキウキしていると、しばらくして城の外壁が近づく。


「かなり大きいですね?」

「そうだねその辺の貴族の領地の十倍は大きいかな、この国王都は更に何倍も大きいぞ!」

(やっぱりよく見ると、夢と魔法の王国の城門と違うな)


立派な城門に突き当たる、何人か並んでいるが、しばらくすると順番だ。

でも門の上の看板、夢と魔法の侯爵領て書いてある。

なんかパロディですかね。


列が進み、門番に言われて、おじさんは胸から何かの板を出す。


「よし通れ、次はお前だ身分証明書を出せ!」

「ちょっと待ってください」

俺は年間パスポートを出す。

「なんだこれは、・・・もしかしてお前は日本人か?」

「はーそうですが」


門番さんは少し考えて聞いてくる。

「他に証明する物はないか?」

「え〜と、そのおじさんの様な板は持ってません」


少し険しい顔の門番さん。

「なら、此処で待っていろ、担当を直ぐに呼ぶからな!」

門番さんは誰かに命令するとその人が何処かに走り出す。

不味いと俺がオドオドしていると、さっきのおじさんが助け舟を出してくれる。


「あゝ待ってくれ門番さん、俺が立て替えておくよ、仮の身分証を発行してくれ」

おじさんは門番に銀貨を渡した。


「いや村長さん、これは金で解決する問題ではないんだ。

報告が遅れると俺が首になる、それと石に手を置いてくれ。

言われて石に手を置いても代わり映え無し。


「よし犯罪者じゃないな、今少しだけ待ってくれ。

村長さんには金を返す」


「おじさんすいません、立て替えて貰って下さったのにどうにもならないみたいです」

おじさんに頭を下げて、ぺこり。


「いや良いよ、さっきのクッキーの代金だ、それでも足りないかもな!」

そのお金を、また俺に渡してくる。


しばらくすると、立派な馬車がこちらに走って来るのが見える。

そして門の隣の所で止まり、降りた女の人が俺の方に近づいて来る。


「遅かったですか、通報の人は・・・あゝ貴方ね、私はリョウコと言います、侯爵様が待っていますので馬車の方にどうぞ来てください。

それと荷物は、無くしてませんね」

中年のおばさんが聞いて来たので俺は答える。

「はい全部持っています」

「では馬車にお乗りください」

俺は初めて馬車に乗る、行き先はお城みたいだ。

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