第27話 浄化してやる〜
「まさか……。『浄化』の魔法まで使えるとは……」
目の前で、傅役のユクピテ卿が唖然としている。それは、俺が『浄化』の魔法を使うことが出来たのが原因であった。
ゴブリン殺しの訓練が終わった後も、武芸の鍛練や魔法の練習は、いつも通り行われている。
武芸の鍛練は、ゴブリンを殺した経験を元に、ピールが魔物などの生物と戦う際のコツなどが指導に加えられ、鍛練の内容を進展させていた。
しかし、魔法の練習については変わり映えぜず、初級魔導書の魔法を繰り返し練習するのみであった。
そんな中、初級魔導書の攻撃魔法に飽きていた俺は、基本属性以外の生活魔法に手を出してみたのである。
基本属性以外の生活魔法の中で最も有名なのは『浄化』であった。『浄化』が使えると汚れなどを綺麗にすることが出来る人気の生活魔法だ。
だが、『浄化』は聖属性の魔法にも被る魔法であり、魔力を多く込めるとアンデッドなど不死系の魔物を浄化して倒すことが出来る。そのため、『浄化』の魔法が出来ると、聖属性の適性があると判断される傾向にあった。
魔法貴族が有望な貴族の子弟を攫って、養子や師弟関係を強制的に結ばせる事案が起こる様に、神殿が聖属性の適性がある貴族の子弟やチャルカンを拐って、神官にしてしまう事案もある。
魔法貴族の場合は、然るべき手続きをして国に訴えれば取り戻すことが出来るが、神殿に攫われたは場合は、国に訴えても取り戻せないこともあった。
その神殿が国に属していない場合もあり、国の指示に従わない場合がある。また、国に属する神殿でも、神の名において神官に選ばれたと言われれば、国としては取り戻すのに手間がかかってしまう。
その様に面倒なことが起こるので、国としても神殿とは事を荒立てたくないのだ。
しかし、俺としては『浄化』を使いたい。何故なら、中世ヨーロッパ風の世界なので、風呂はあることはあるが、辺境のクヴァファルーク領には石鹸は無いし、風呂に入った後も綺麗になった感じがしない。
しかも、風呂の用意は手間がかかるので、毎日入れる訳では無いのだ。
実は、俺は『浄化』を無詠唱で使うことが出来る。俺は怪しまれないために、風呂で『浄化』を自身に使っていた。そうすれば、身綺麗になっても、疑われづらいからだ。
しかし、風呂で『浄化』を使って綺麗にしても、着替えがあまり綺麗では無い。使用人たちが洗ってはいるだろうし、洗えない服も何とか綺麗にしているのだろう。だが、現代日本からの転生者としては満足出来なかった。
では、怪しまれずに『浄化』をするには、どうすれば良いかと言えば、簡単なことである。俺が『浄化』を堂々と使えれば良いのだ。
なので、俺はユクピテ卿に『浄化』をやってみたいと所望したのである。既に無詠唱で『浄化』を使えるので、完全に出来レースではあるが。
生活魔法の『浄化』については、初級魔導書にも書かれている。『浄化』な便利で人気のある生活魔法だ。そして、聖属性魔法の適性を確認する生活魔法でもあるので、希少な聖属性魔法の適性者を見つけ出すためにも、初級魔導書に書かれているのである。
ユクピテ卿の許しも出て、『浄化』を唱える時が来た。ユクピテ卿も流石に俺は聖属性を使えないだろうと思っていたのだろう。いや、使えないで欲しいと願って、『浄化』の使用を許可したのかもしれない。
「――――、浄化!」
俺は『浄化』の詠唱をし、呪文を唱えると、俺の周りをキラキラとした光が漂い、俺を包んでいく。
そして、光が収まると、魔法の訓練でかいた汗や身体や服の汚れは落ち、綺麗な姿になっていた。
風呂で無詠唱で使っていた際は、光など出なかったが、詠唱文に光るエフェクトのコードでも入っているのだろうか?
やはり、魔法は想像力と言うか、イメージが大切なのだろう。俺の『浄化』は光らなずに綺麗になるイメージであった。
流石に、聖属性の生活魔法である『浄化』まで使えたことで、共に魔法の訓練していた家臣たちは驚いている。
そして、ユクピテ卿は唖然とした後に、頭を抱えることとなった。
「若様、『浄化』は私が了承した時しか使ってはなりませぬぞ」
俺は、ユクピテ卿から無断で使わない様に釘を刺されてしまう。今まで風呂で使ってたが光っていないのでバレていない。
ユクピテ卿の言う通り、人前で『浄化』は使わない方が良さそうだ。神殿に攫われるかとしれないしな。
こうして、俺は近臣たちに『浄化』を使えることを認知させることが出来た。また、『浄化』の他にも初級魔導書に載っていた生活魔法についても使える様になっている。
そして、俺はこっそりと『浄化』を使い続けるのであった。
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