第18話 魔力適性検査 下
「若様、引き続き魔力適性検査を実施いたします。では、火属性の生活魔法を発現してください」
休憩も終わり、魔力適性検査の続きが執り行われる。ユクピテ卿は、俺に火属性の生活魔法である「種火」を使う様に促した。
俺は「種火」の詠唱の詠唱を始めると、風属性の生活魔法である「微風」と似た様な感じがする。詠唱している間に、一定量の魔力が抜けていく。そして、種火を発現する位置の選択を求められる感覚に襲われる。「種火」は手の先か指定の場所に発現出来る様だ。
「――――、種火!」
俺は詠唱を終え、生活魔法を唱えると、俺の人差し指の先からライターの火の様な小さな火が発現する。俺が発現を指定した場所は、手の人差し指を指定したのだ。この方が扱いやすいからな。魔法の火は、術者にとって熱くないらしく、指先に温かさは感じるものの、火傷するような熱さは感じなかった。
こうして、俺は基本の4属性の生活魔法を発現することに成功した。現時点で4属性を使う上で最低限の適性はある様だ。
「3歳で4属性の適性があるとは……」
ユクピテ卿は、もしかしたらとは思っていた様だが、俺が本当に4属性全ての属性があったことに驚き、唖然している。サヴァルを除いた他の家臣たちは俺との接点が少ないので、尚更驚いてしまっている様だ。
「まさか、4属性全ての適性があるとは……。期待はしておりましたが、若様には驚かされました……」
最も早く現実に戻ったユクピテ卿は、他の家臣たちに声を掛けて元の世界に戻すと、俺に所感を述べる。
「4属性の適性が分かったので、引き続き光と闇は属性の生活魔法を発現していただきます。ここまで来たら、基本属性の全てに適性があって欲しいものですな。はははは……」
ユクピテ卿は光と闇属性の生活魔法の適性検査へ移行する旨を告げ、俺に詠唱を促す。
光と闇にも適性があって欲しいと言った後、乾いた笑いをしているが、それはフラグだぞ……。
まずは、光属性の生活魔法である「光玉」を行使する。「光玉」を発現するため、詠唱を唱え始めると、魔力を消費しながら、自分の周囲に魔力が収束していくのを感じた。そして、その収束した魔力は、光の玉の素となる魔力の様で、その魔力を動かすことで、その動いた場所に光の玉を発現出来る様だ。
俺は、魔力を俺の前に動かし、詠唱を終える。
「――――、光玉!」
俺が「光玉」を唱えると、俺の前にあった魔力の塊が光り、光の玉が発現した。俺は「光玉」を使うことにも成功する。
「光玉まで使えるとは……」
ユクピテ卿は驚き疲れた様子で呟く。家臣たちは唖然とし、驚き慣れたのかユクピテ卿だけが正気のままであった。
ユクピテ卿は家臣たちに声を掛けて、再び現実の世界へと引き戻す。
「若様、最後に闇属性の生活魔法を発現していただきます。一般的には光属性の適性があると闇属性の適性は難しいと言われておりますが、両方適性のある先例は幾らでもあります。これまで、全ての属性に適性のある若様ならば、闇属性も発現出来るはずです」
ユクピテ卿は最後に闇属性の生活魔法である「遮光」の発現を促す。それにしても、ユクピテ卿は変なフラグを立てた気がするんだが、闇属性だけは使えないなんてことは無いよな……?
俺は「遮光」の詠唱を唱え始める。すると、魔力が消費され、俺の頭上に覆う様な感じで魔力が収束されていく。遮光は詠唱を唱える魔法の中でも融通が効きそうな感じがして、上手く遮光が出来る様に形を変えられそうだ。
取り敢えずは、現状の日傘の様な形をイメージし、俺の頭上に設定する。そして、詠唱を終えて、魔法を唱えた。
「――――、遮光!」
すると、俺の頭上の魔力が顕現し、黒い靄の様なモノが日傘の傘部分の形で現出した。
俺の上に浮かぶ日傘の様な「遮光」は、空から降り注ぐ太陽の光が、俺に当たるの防ぎ、見事に遮光の役目を果たしている。
「本当に闇属性まで使えるなんて……。基本属性全てが使えるなんて……」
ユクピテ卿は自分で言ったくせに、いざ闇属性まで使えたら、再び唖然としてしまった。驚き慣れたユクピテ卿でさえ、そうなのだから、家臣たちは言わずもがなである。
やはり、一番先に現実に戻ったのはユクピテ卿であり、他の家臣たちを正気に戻していく。
「若様、私は本当に驚きましたぞ!まさか、本当に基本属性の全てに適性があるとは……。若様の傅役になれたことを改めて光栄に思います」
ユクピテ卿は俺が全属性に適性があったことで、傅役として誇らしく思っている様だ。そんなユクピテ卿に冷水を掛けてやることにした。
「じゃあ、じょ〜かもやってみる?」
「いえ、今はやらなくて結構です!」
俺が「浄化」の適性もあるか試してみるかと聞いたら、ユクピテ卿は慌てて止めに入る。基本属性が全て使える上に、浄化まで使えたら更に大騒ぎになるからだろう。
こうして、俺の現段階の魔力適性検査は終わった。
予想通りと言うか、この世界の神が与えてくれた恩恵通り、魔法の能力を優遇してくれたことを実感する。詠唱を唱えながら魔法をした感じだと、生活魔法は無詠唱で使うことが出来そうだし、イメージを持って使えば応用の幅は広がりそうだ。
魔力適性検査が終わったことで、俺は魔法の練習が始まることを期待しつつ、魔法訓練場を後にしたのであった。
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