第17話 魔力適性検査 上

「若様には魔力の動きを分かっていただいたことですし、生活魔法を使っていただいて、魔法の続々の適性を判断させていただきたいと思います」


 ユクピテ卿から、魔力操作の流れを把握したので、生活魔法を使って魔法適性を検査する旨を伝えられる。

 注意事項なども説明されたが、取り敢えず何となくヤバいと思ったら、声を上げるか魔力の流れを止めろとのことだ。魔力の流れを止めるのはまだ分からないかもしれないので、まずは声を上げるのが大切だと言う。


 魔力適性検査で行使する生活魔法は、火属性「種火」、水属性「出水」、風属性「微風」、土属性「土除」、光魔法「光玉」、闇魔法「遮光」である。

 しかし、安全面から風、土、水、火、光、闇の順で行うそうだ。4属性の中でも、比較的に危険性の少ない風属性から、危険性の高い火属性の順で行われる。

 光と闇属性が4属性の後なのは、光と闇の魔法適性を持つ者が、そもそも少ないかららしい。そのため、それなりに適性の有る4属性から行うとのことであった。



「では、始めてください」


 ユクピテ卿の開始の合図とともに、俺は「微風」の詠唱を唱え始める。「微風」は赤子の頃から風魔法を使っていたので、コントロールには自身があるのだ。

 しかし、今回は詠唱をしっかりと唱えながら「微風」を発動させ様とする。すると、いつもは自身が想像して魔力をコントロールさせて風を起こすのだが、詠唱を唱えた場合は、自動的に一定量の風が発動し、定量の魔力が抜けていく。

「――――、微風!」


 俺が詠唱を終えて、生活魔法を唱えると、細やかな風が吹いた。魔力を注ぎ続ける限り、一定の風が吹き続ける様だ。こうして、俺は問題無く「微風」の生活魔法を発動させることに成功した。

 俺は風魔法に少しは習熟している自信がある。そのため、今回は初めて詠唱を唱えて魔法を発動させたが、普段の風魔法を使う場合と異なり、想像力や魔力操作の必要が少ない代わりに、一定の威力と魔力消費で発動することが分かった。前世的な感覚で言うと、プログラム通りに決まった威力と魔力が消費されるゲームの世界の様な感じだ。


「おぉ!若様は風魔法の適性がある様ですな」


 俺が「微風」の発動に成功したことで、ユクピテ卿や家臣たちが称賛してくれた。

 続いて、土属性の生活魔法である「土除」の行使を促された俺は、詠唱を始める。

「土除」の詠唱を唱えてる間、どの様な魔法を発動させたいかと言う様な求めを感じ、「土除」とはどの様な魔法であったかを思い出す。「土除」は土をどかすか少し穴を掘れる魔法だ。俺は無難な土をどかすイメージを浮かべると、それに対応した魔力消費を感じる。


「――――、土除!」


 俺が「土除」の詠唱を唱え、魔法を発動すると、俺が望んだ位置の土が少し動かすことが出来た。詠唱のプログラムが「微風」と異なるのか、選択肢を選ばなければならなかったり、それに対応するであろう魔力消費も違う様だ。術者と発動させる距離によって、更に魔力消費量が違う可能性もあるな。


「土魔法にも適性があるとは!」


 俺の魔法適性が順調だからか、ユクピテ卿たちは喜びの声を上げる。土魔法も発動した感触だと、風魔法と同じ様にイメージで無詠唱発動が出来そうだ。

 今度は「出水」の生活魔法を唱える。詠唱を唱え始めると手を媒介に、水が集まる感じがする。手に魔力が集中し、水が集まることで徐々に魔力が消費されていく。


「――――、出水!」


 俺が詠唱を唱え終え、「出水」を発動させると、手の先から水が出てきて流れだす。水が流れている間、魔力は消費されていく。魔力を消費している間は、水が出続ける魔法の様だ。


「水魔法にまで適性があるなんて、驚きました」


 ユクピテ卿や家臣たちは、俺が基本属性の4つの内3つが使え、適性があることが分かり、感嘆の声を上げる。

 属性魔法で3つ使えるのは、貴族としても魔法適性は優秀な部類に入るそうだ。家臣たちにとっては、次期当主に魔法の才能があることは喜ばしいのだろう。


 俺に3つの魔法の適性があることが分かったところで、ユクピテ卿は休憩を挟むことを告げる。魔力を結構使っているはずと体調なども確認してくるが、俺にとっては魔力をそんなに多く使った感じはしなかった。

 一応、休憩を取ることとなったが、俺は残りの魔法にも適性があることを期待しながら、ユクピテ卿やサヴァルたちと魔法についての話をしたのであった。

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