第16話 魔力の流れを感じてみよう
「若様、魔法適性検査を始めます」
ユクピテ卿が俺に魔法適性検査の実施を伝える。今日は、俺の魔法適性検査が行われるのだ。
魔法適性検査は実際に魔法を行使するので、初級魔導書を読む時とは違い、魔法訓練場で行われ、サヴァルでは無くユクピテ卿が取り仕切る。
俺はまだ3歳であるが、魔法適性検査の結果については期待されていない。3歳で魔法適性検査を行うのは、魔法貴族の家か、それを目指す宮廷貴族家ぐらいだ。それらの貴族家とて、3歳で魔法適性検査を行っても発現しないことの方が多いらしい。
幼少期の魔法適性検査は、まだ当人の魔力が未発達であることや魔力操作が上手くないことなどから、正確な結果が出ないことの方が多いそうだ。そのため、幼少期の適性検査の結果で適性が無いと判断された属性も成長とともに使える様になることが多い。
魔法適性が確定するのは、一般的には15、6歳と言われている様だ。しかし、鍛錬を続けることで大人になっても適性のある属性が増えると言った事例もあるらしいので、苦手な属性の魔法も魔力操作や魔法の鍛錬を地道に行えば使える様になる可能性があるらしい。
今回の俺の魔法適性検査は、初級魔導書を読み始めた俺が魔法に興味を持ち始めているだろうと判断した傅役のユクピテ卿と家令が企画した記念検査と言う扱いなのだろう。
取り敢えず、俺は風魔法は「微風」ぐらいなら使えるんだけどな……。
「若様、まずは魔力の流れを分かっていただきます。私が若様に魔力を流すので、何となく感じていただけるとよろしいかと」
ユクピテ卿は俺に魔力を流し、互いの魔力を循環させ合うことで、俺に魔力を認識させる様だ。まだ、魔力を認識させる実習などしていなかったので、記念適性検査を行う前にやれば良いとユクピテ卿は判断したのだろう。
ユクピテ卿は、自身の手と俺の手を繋ぎ合わせると、目を瞑り集中し始める。すると、ユクピテ卿の手から繋がった俺の手介して、温かいモノが徐々に流れ込んで来るのを感じとることが出来た。
これは、俺が赤子の時から魔力を動かしていたのに似ている。しかし、ユクピテ卿が送ってくる魔力が赤子の時の俺が流す魔力より大きいからか、より温かく感じるとともに、魔力の流れをより分かることが出来た。
そして、ユクピテ卿の魔力は、俺の胸と腹に達する。すると、俺の胸と腹にある魔力の塊をハッキリと感じ取ることが出来た。更に、ユクピテ卿の魔力が身体を流れることで胸と腹にある魔力の塊の回路が繋がるのを感じる。その2つの魔力源の回路が繋がったの感じ取った瞬間、一気に全身を魔力が巡り始めたのが分かった。
こうして、俺は自身の身体の魔力の回路が繋がったのをハッキリと感じ取ったのである。俺が赤子の時から感じ取れていた自身の魔力や回路は、大したことが無かったのだと実感させられた。そして、その程度の魔力や魔力操作で起こせる「微風」を思うと、生活魔法と魔法の大きな違いを認識させられるとともに、チャルカンと貴族の決定的な差を理解させられたのであった。
全身の魔力回路に自身とユクピテ卿が巡り、溢れ出しそうになると、俺の手からユクピテ卿の手へと魔力が流れていくのを感じる。こうして、俺とユクピテ卿の魔力回路は繋がった。
「おぉっ!!」
急にユクピテ卿が驚く。驚いたものの手を離すことは無かった。
「若様の魔力は凄まじいですな……。魔力回路が繋がったことで感じ取れますが、大人と同程度の魔力があるやもしれませぬ……」
ユクピテ卿の言葉に、周囲の大人たちがざわめきだす。横で見ていたサヴァルもユクピテ卿の言葉に驚愕している。
「若様、魔力の流れが分かったと思われますので、私から魔力を流すのを止めたいと思います。私の魔力が流れ込んでこなくなったら、手を離してください」
ユクピテ卿がそう言うと、徐々に俺の身体に流れ込んでくる魔力が減っていく。そして、ユクピテ卿の魔力が入って来なくなると、俺は手を離したのであった。
手を離した後のユクピテ卿によると、お互いに魔力循環している中で、急に魔力回路を切断すると危険な場合があるらしい。先程、ユクピテ卿が俺の魔力に驚きながらも手を離さなかったのは、それが理由な様だ。
また、幼子に魔力回路を認識させるため、魔力を流すのは、送る量の調整が難しいとのことである。送る魔力が多すぎると送られた側の魔力回路を損傷させてしまう可能性があるし、少ないと意味が無い。適切な魔力量を送り込み、魔力を循環させることで魔力回路を繋げ、当人に魔力の存在を認識させる必要があるそうだ。
「じぃ、これで、まほ〜をつかってもいいの?」
「えぇ、魔法を使うことは出来るかと思われます。そのため、まずは魔法適性検査を行います」
ユクピテ卿との魔力循環によって、俺は自身の魔力回路を繋げることが出来た。魔法を使える下地は出来たということで、いよいよ魔法適性検査が行われることになったのであった。
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