第15話 生活魔法
「若様、本日は生活魔法の箇所を読んでいただきます。生活魔法は魔法適性を確認するためにも必要なので、しっかりと読んでください」
今日の初級魔導書の読書は、生活魔法の箇所を読む。概論の後も、初級魔導書のくせに細々と分かりづらい記述で魔法について書いてあるのを読み、段々と飽きていた。
いよいよ、俺の魔法適性を確認することが出来る様だ。
「生活魔法は、各基本属性ごとに幾つかございます。その中で最も簡単なものを発現して、魔法適性を確認いたします。生活魔法を発現出来ない属性は、適性が無い属性となりります。生活魔法で適性を確認した後、攻撃魔法を発現出来るかで、貴族としての魔法適性が確定いたします」
サヴァルが説明してくれた通り、適性のある魔法を確認するために生活魔法を使い、適性があった属性から攻撃魔法を使って、貴族としての魔法適性を確認するのが一般的な魔法適性の確認方法だ。
大規模な神殿や大国の王家には、魔法適性を確認する魔法具があるそうだが、クヴァファルーク領にある訳も無いので、一般的な魔法適性の確認方法が採用されている。
初級魔導書の生活魔法の章を読むと、各基本属性ごとの生活魔法と説明について書かれていた。
生活魔法には様々なものがあるが、適性検査で使用される魔法は各属性で1つずつだ。
火属性は「種火」、水属性は「出水」、風属性は「微風」、土属性は「土除」、光魔法は「光玉」、闇魔法は「遮光」である。
「種火」はその名の通り、種火を発現し、薪などに火を点けることが出来る。どこでも火を起こすことが出来るため、重宝される生活魔法だ。
「出水」は、清潔な水を出すことが出来るため、飲み水や生活用水として使えるため、「種火」以上か同等に重宝される。
「微風」は、その名の通り、微風を出す魔法である。はっきり言って微妙だが、使い方次第では役に立つ。微風を起こして乾燥を早めたり、火に微風を当てることで火力を少し強めたりなど……。本当に微妙な魔法だ……。
「土除」は、土を動かして除ける魔法である。これも微妙な魔法であるが、邪魔な土を除けるだけで無く、穴を掘ることも出来るので、「微風」よりは役に立つそうだ。
農業や工事などの補助としては、それなりに重宝されるとのこと。
「光玉」は、光の玉を浮かべて明かりにする魔法だ。これは「出水」と「種火」に並んで重宝される。
この世界では、電灯はまだ無いため、夜になると真っ暗になってしまう。その様な中で明りとなるのは、火を灯りにするのが一般的だ。
しかし、「光玉」を明かりに使うことが出来る。そのため、貴族家では「光玉」を使えるチャルカンを騎士として召し抱えているほどだ。
「光玉」、「出水」、「種火」を使えるチャルカンは騎士てして重宝されるのである。貴族が直接的に必要とするのは「光玉」くらいだが。「出水」は平民の使用人に水汲みをさせれば良いし、「種火」も平民の使用人に火起こしをさせれば良いのだから。
最後の「遮光」は、その名の通り光を遮る魔法だ。用途は限られるものの、重宝される。
女性貴族が日焼けしないため、外出時に遮光の魔法を使わせたりするのが日常的だ。
また、戦時や狩りの際などに、味方の「光玉」や焚火などの光源を遮光することで、行動を秘匿することが出来る。
どちらかと言うと、戦争などの荒事の際に重宝される魔法と言えるだろう。
6つの基本属性の生活魔法については、他にも幾つかの魔法があるが、最も良く使われ、魔法適性検査に使われる魔法である。
基本属性以外の生活魔法もあるが、支援魔法と混同される場合もあり、魔力消費量によって効果が変わる魔法もある。
そう言った魔法で最も有名なのが「浄化」だ。
「浄化」は、その名の通り浄化する魔法だ。騎士たちの様に魔力が少い者が使用すると汚れ落し程度だが、貴族が魔力消費量を増やして使用すると汚染されたモノを浄化することも出来る。貴族でも特別に魔力が多い者が多大な魔力を消費すると汚染された大地でさえ清浄化することが出来るとか。
そのため、「浄化」は神聖魔法の生活魔法とも言えるが、一部の神殿関係者の中には認めようとしない者もいる。
一応、初級魔導書では「浄化」は神聖魔法の生活魔法として定義されており、多くの神殿関係者も同様の認識だ。
しかし、「浄化」は貴族や騎士にはあまり人気の無い生活魔法である。「浄化」で汚れを落とせるにしても、騎士のやるべき仕事では無いし、平民の使用人に汚れを落とさせれば良いだけの話だ。
そのため、「浄化」を覚えても貴族家で重宝されにくく、個人的に使う便利な生活魔法程度の認識であった。使えると個人としてはとても便利な魔法であることには違いないが。
こうして、魔法適性検査で使用する生活魔法について学んだ。詠唱も短く簡単であるため、すぐに覚えられたが、勝手に使用することは禁止されている。
俺の魔法適性検査は、後日に魔法訓練場で実施されることとなった。すぐにでも検査して欲しいのだが……。
しかしながら、俺は風魔法以外の、どの魔法が使えるのか分かるのが楽しみで仕方無いので、魔法適性検査の日を心待ちにするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます