第14話 初級魔導書の概論
「ファリマテク様、では魔導書を読んでみましょう」
サヴァルが初級魔導書を携えて、俺の部屋へとやって来た。今日から文字の勉強は初級魔導書を読みながら行われる。好きこそ物の上手なれではないが、興味あることから学ばせることで、俺を成長させようと傅役と家令は考えている様だ。
「まずは、魔法の概論についてです。読んでみて分からないことや言葉があったら、尋ねてください」
サヴァルは初級魔導書の内容について説明する前に、まずは俺に読ませる方針であった。この初級魔導書の読書は、そもそもが文字の勉強をするためなので、中身を理解するよりも、読むことが重視されている。
子供用の本など無いので、大人向けの本を読んで文章を読む訓練をしなければならないのだ。そのため、学ぶ者が興味のある本で文字や文章の勉強をするのが一般的なのである。
サヴァルに言われた通り、初級魔導書の概論に目を通す。すると、すぐに分からない単語や文章が出て来た。なので、俺はサヴァルに尋ねる。
「あぁ、これですか。これは――」
サヴァルは、俺の質問に丁寧に答え、分からないことを教えてくれる。サヴァルは初級魔導書を既に読み終えているので、ある程度は理解しているのだ。
しかし、サヴァルでも曖昧なところや理解出来ていないことがあった場合は、傅役のユクピテ卿が答えてくれる。傅役はサヴァルが教えている様子を眺めながら、上手く補助してサヴァルの成長を促していた。
こうして、俺は分からない言葉や単語が出る度に、サヴァルに尋ねていく。そして、サヴァルに教えて貰った内容を紙に書いて、纏めていった。
この世界の紙は、羊皮紙に似た紙で、植物の紙では無い。そのため、本は分厚いし、紙片も扱いづらいのだ。この羊皮紙の様な紙は、モンスターの皮を加工して作られているらしい。
「ファリマテク様、その紙を見せていただいてもよろしいですか?」
俺は前世の知識を活かし、語学のノートを纏める様に、単語や文法を整理して紙に書いていた。
それを横で見ていたサヴァルが気になった様で、中身を見せてくれと頼んでくる。仕方無いので、俺はサヴァルに紙を渡した。
「分かりやすい……」
まぁ、そりゃ前世で教育の専門家たちが考えたノートの取り纏め方を参考に書いてるんだから、それなりに分かりやすいだろう。
「ファリマテク様、私も若様の書を参考にさせていただいてもよろしいですか?」
「べつにい〜よ」
サヴァルは俺の取り纏め方を参考にさせて欲しいと語る。まぁ、好きにすれば良いんじゃないかな?俺が考えた訳では無いし。
斯くして、俺は初級魔導書の前段に書かれている概論を一通り読めるようになったのであった。
一通り読めるようになったため、間違いが無いを音読してサヴァルに聞いてもらい、確認してもらう。
特に問題が無かったため、俺は概論の内容についてサヴァルに教えてもらうこととなった。サヴァルの教えに不備があった場合などは、ユクピテ卿が補足説明を入れてくれる。
こうして、俺は概論について大まかに理解することが出来た。
初級魔導書の概論に書かれていた中で特に重要なのは、魔法の属性についてである。
魔法は基本的に『火、水、土、風』の4つの属性と『光、闇』の属性に大まかに分けられている。更に細かく属性が分かれたり、他の属性もあるのだが、初級魔導書では取り上げないそうだ。
また、次に重要な内容として、魔法に身体強化魔法、生活魔法、攻撃魔法と言う分類に大きく分けられる。
身体強化魔法は、その名の通り身体を強くする魔法だ。生活魔法は先程挙げた基本的な属性の魔法の中でも魔力消費量が低く、殺傷能力の無い弱い部類の魔法が該当する。
攻撃魔法は魔力消費が大きいものの、殺傷能力の高い強力な魔法だ。攻撃魔法と大まかに分類されているが、回復魔法や支援魔法などの魔力消費量の大きな魔法を総称して呼ばれているそうだ。
魔力保有量の少ないチャルカンは身体強化魔法と生活魔法しか使えないが、魔力保有量の多い貴族は、攻撃魔法を使える。貴族であるかチャルカンであるかの差の判断は、攻撃魔法に該当する魔法が使えるか使えないかであった。
因みに、チャルカンである平民を除いた大部分の「平民」と呼ばれる層は、魔力保有量が微弱であり、身体強化魔法や生活魔法すら使えない。
魔法とは貴族やチャルカンのみが使える特権であった。例外はある様だが、初級魔導書の概論に書かれていない。
これらが、初級魔導書の概論に書かれていた大まかな内容の中で重要なものである。
概論を読み終えた俺は、次のステップに進むことを期待するのであった。
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