第12話 魔法貴族と当家の魔法事情
「貴族を3つに分けた中で、最後に挙げるなが【魔法貴族】でございます」
ユクピテ卿は、領主貴族と宮廷貴族の魔法教育の例外については話さず、魔法貴族の説明を始めた。俺が知りたいのは、例外の方なんだが……。
「魔法貴族とは、宮廷魔導師や魔法学者などの魔導師の貴族たちが当て嵌まります。魔法貴族と呼ばれる者たちは、魔導師として栄達して、何代も魔導師を輩出している家があります。そう言った家では、家伝の秘技とされる魔法や書物などがあり、それを子々孫々に伝えるため、幼い頃から魔法の教育をするとか」
「おさないころとは、なんさいぐらいなの?」
「伝え聞いた話なので、真かは分かりませんが、大体は5歳ぐらいから魔法の教育が行われるらしいです。早い家だと3歳からと言う噂もあります」
ユクピテ卿の話では、魔法貴族の家だと5歳ごろから魔法の教育がされるらしい。羨ましいんだが……。しかも、早い家だと3歳って、俺と同じ歳やんけ……。俺も魔法貴族の家に生まれたかった……。
「りょ〜しゅきぞくや、きゅ〜て〜きぞくは3さいから、まほ〜をまなべないの?」
「あまり、聞いたことはありませんが王族や大貴族ならば、魔法の才能のある子息を召し抱えている魔導師に教育させているかもしれませんな。宮廷貴族でも魔法の才能のある家ならば、自家を魔法貴族にせんと幼子を教育しているかもしれませんが、大貴族たちに比べると余裕が無いので、いたとしても極僅かかと」
領地貴族や宮廷貴族では、大貴族の様に余裕のある家だと、才能のある子供がいれば家臣の魔導師に魔法教育を早くしているのかもしれないのか……。宮廷貴族でも、魔法貴族へ転身したいと考えている家は、子息に魔法の教育を早期に実施している可能性はあるらしい。
何とかして、俺も魔法教育を受けられないものだろうか……?
「わたしも、まほ〜のべんきょ〜をしたい!」
「若様は魔法の勉強をしたいのですか?しかし、当家には魔導師がおりませぬ……。辺境にあるクヴァファルーク領では魔導師を召し抱える余裕がありませぬ故……」
俺が魔法の勉強をしたいとユクピテ卿に訴えると、彼は苦笑しながら魔導師がいないため無理だと言う。
俺はユクピテ卿の話を聞いて、クヴァファルーク領が辺境にあることを初めて知った……。マジか……中世ヨーロッパ並の環境だと思っていたが辺境だから寂れているだけなのか……?
「では、みなはどうやって、まほ〜のべんきょ〜をしてるの?」
「魔法を教える教師がいるのですよ。魔導師と呼ばれるほどの粋に達していない宮廷貴族が何名かおります故、その者たちに習っております。その様な宮廷貴族が魔法貴族へと転身するため、子息に魔法の教育をするのでしょうが、当家の者たちはそこまで執心では無いようなのです」
魔導師と名乗ることが許されるほどのレベルの者で無いと、魔法貴族として認められないそうだ。先程、ユクピテ卿が魔法貴族への転身を図って教育をしている宮廷貴族と言うのが、魔法の教師をしている宮廷貴族らしい。当家に仕える宮廷貴族たちは魔法貴族への転身を目指していない様だが、ヤル気が無いのだろうか……?
「わたしは、まほ〜のきょ〜したちにおしえてもらえないの?」
「御止めになった方がよろしいでしょう。当家で魔法を教えている者たちは、些か問題があります故……。その者たちは私と同じく分家出身なのですが……」
俺は魔法の教師役に教えてもらおうと思ったところ、ユクピテ卿に止められてしまう。魔法の教師役たちは問題のある者はたちな上、当家の分家筋の者たちらしい。
ユクピテ卿が言葉を濁しているのは、分家の地位を笠に着て問題を起こしているに違いない……。魔法貴族に転身するための努力もしてない様だしな……。
では、当家の家臣たちは、どの様にして魔法を学んでいるのかが気になった。
「じゃあ、みなはどうやって、まほ〜をべんきょ〜してるの?」
「当家の者の多くは、親しい先達や魔法の上手い先達に教わっているか、図書室の魔導書を読んで学んでおります」
ユクピテ卿は苦笑しながら、当家の魔法の練習事情を語る。
魔法の教師役に習わず、親しい先輩や魔法の上手い先輩に習ってるとか、魔法の教師役の意味が無いじゃね〜か……。
しかし、魔導書があるのか……。読んでみたいぞ……。
「まど〜しょ、よみたい」
「若様が文字を覚えになられたら、持って参りましょう」
俺は魔導書を読みたいと訴えると、ユクピテ卿は苦笑を浮かべながら、困っている。
そして、俺が文字を覚えたら、魔導書を読ませてくれると約束したのであった。
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