第10話 魔法と身分
「サヴァルは、まほーはつかえるの?」
「えぇ、多少なら使えますよ」
俺は文字の勉強の合間に、サヴァルが魔法を使えるのか尋ねた。すると、サヴァルは魔法が使えるとの返事か返ってくる。
「どんな、まほーがつかえるの?」
「私が使えるのは、水と風系の魔法ですかね。火の魔法は苦手ですが、種火くらいなら点けれますよ」
サヴァルは水と風の魔法が使えると聞いた俺は、サヴァルに魔法の魔法を見てみたいと思った。
「サヴァルのまほーをみせてよ」
「申し訳ございません。魔法は危険なこともあるので、ユクピテ卿の御許しが無いと難しいかと思われます」
魔法は危険なこともあるので、サヴァルは傅役の許可がないと見せられないと言うので、ユクピテ卿の方を見ると、首を左右に振る。俺に魔法を見せるのはダメらしい。
「若様が魔法を見るのは、まだ早いかと思われます。魔法は危険なことも起こりうるのです。魔法は子供に見せると使いたがってしまうもの。過去に悲しい出来事も起こっているのです……」
ユクピテ卿は私のもとへやって来ると、魔法を子供に見せると、使いたがるから危険だと諭された。子供とは言え、貴族の子息が魔法を見様見真似で使ってしまい、事故が起きたことが何度もあるそうだ。今もなお定期的に起こるらしい。
俺はユクピテ卿の話に納得し、魔法を見せてもらうことを諦めた。俺の横で目を輝かせて期待していたテトに危うさを感じてしまったのだ。
「じゃあ、まほーのはなしをしてよ」
俺がユクピテ卿とサヴァルに魔法の話を求めると、俺の横にいたテトが再び目を輝かせる。テトは魔法に興味があるか、文字の勉強の時とは違い興味津々である。
「良いでしょう。簡単なことならお話いたします」
こうして、ユクピテ卿が簡単ながらも魔法のことを話してくれることとなった。
「魔法は基本的に貴族しか使えません。しかし、この場合の魔法とは攻撃魔法のことを指します」
ユクピテ卿は、この世界の常識として貴族が使う魔法とは攻撃魔法を指し、狭義の意味の魔法だと言う。攻撃魔法とは相手を殺傷させる威力を持つ魔法のことだそうだ。
しかし、回復魔法やその他の魔法など、攻撃魔法とは異なる魔法しか使えない貴族もいるらしい。
そこで、広義の魔法が出てくる。広義の魔法とは、身体強化魔法や生活魔法を含めたものだそうだ。
身体強化魔法は魔力を保有していれば、保有魔力が少なくとも使えるらしい。ただ、保有魔力が多いほど身体をより強化することが出来る。
生活魔法とは弱い魔法を総称したものを指し、正確な分類としては定義立っていないそうだ。小さな火魔法で種火としたり、弱い水魔法で飲み水を使うなど、殺傷能力が弱いものの生活に役立てる魔法を一般的に魔法と生活魔法と呼んでいるらしい。
そして、この広義の魔法と狭義の魔法が混じりあって、この世界の身分が形成されている。
この世界で最も多いのが、魔力を保有していない平民であり、平民は魔法を一切使うことが出来ない。
次に平民と貴族の中間層としてチャルカンと呼ばれる層がいる。チャルカンこそ広義の魔法である身体強化魔法と生活魔法が使える者たちだ。
チャルカンの存在は、平民と貴族の双方から重宝されている。平民たちにとっては身体強化魔法で、力仕事や居住地の防衛、魔物討伐などで活躍するとともに、生活魔法で日常生活に貢献してくれるからだ。
貴族にとっては、体の良い使いっ走りである。しかし、魔力を持たない平民よりも活躍の場は多く、貴族より数が圧倒的に多いのだ。
また、チャルカンは貴族の庶子の場合が多い。貴族が平民に手を付けて子供を産ませると、貴族より保有魔力の少いチャルカンが産まれてくることが多い。
そんなチャルカンは、貴族に使えると「騎士」身分を与えられ、準貴族的な扱いを受ける。しかし、平民階層にもチャルカンはおり、平民と貴族の間の層となっているのが実態だそうだ。
騎士身分となっているチャルカンは大抵は貴族の庶子らしい。また、チャルカン同士で子供を作ると、チャルカンが産まれるため、騎士と呼ばれる身分が確立しているのが現状の様だ。
そして、狭義の魔法と呼ばれる高威力の魔法を使えるのが貴族である。
基本的な魔法の基準としては、相手を殺傷する威力のある魔法を指す。しかし、例外も多く、回復魔法や支援魔法と言った魔法も狭義の魔法に含まれる。
では、広義の魔法と狭義の魔法の違いとしては、チャルカンが使える魔法か、そうでないかである。
身体強化魔法と生活魔法に分類される魔法しか使えない者は、保有魔力が高い狭義の魔法を使えない。これは、国などが持つ魔力測定装置的な貴重な魔法具で消費魔力の計測が行われており、大体は確立されてしまっているそうだ。
厄介なのは、その魔力測定装置的な魔法具は、発現した魔法を測定することは出来るものの、個人の保有魔力を測定することは出来ない。個人の保有魔力を測定出来る装置は存在するものの、世界に数個しか無く、貴重な物で使われる機会は非常に少いらしい。
この世界は魔法が重要な位置を占めており、魔法が使えるかどうかによって、貴族、
その基準も、使われる魔法の消費量が大まかに測定されており、それによって広義の魔法と狭義の魔法の区別がなされているそうだ。
貴族で魔法が使えない者はいるのか、いるとしたらどの様な扱いになるのかを尋ねたところ、例外として存在するらしく、その話は別の機会にとなった。
まだまだ魔法に対しての疑問点は多いものの、自分が密やかに使っている風魔法はどの様な扱いになるのか……。
こうして、俺は魔法に対する興味がより強まっていったのであった。
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