プロローグ

「グギャァァ!!!!!!!」


 暗く狭い空間の中で、醜い叫び声が響き渡る。その空間は、石壁で囲まれており、据えた臭いが漂っていた。

 冷たく暗いその空間を見れば、誰もが拷問部屋だと答えるだろう。その通り、その部屋は拷問部屋であった。部屋の中には様々な拷問器具が並べられている。

 部屋の中では、今まさに拷問が行われているのだ。


 ただ、その拷問の光景は異様であった。拷問を受けているのは人間では無いのである。

 拷問を受けている存在は、人間の子供程度の背丈で緑色の肌をしていた。ファンタジーが好きな人なら「ゴブリン」と答えるだろう。

 その通り、拷問を受けているのはゴブリンであった。


「フッフッフ…。ゴブリンは本当に良い声で鳴くわ…」


 拷問を行っている者は、薄笑いを浮かべ、その目は愉悦に色に染まっている。全体的に細い身体であり、服装は汚れて良いものであろうが仕立ての良さを感じられるものだ。

 しかし、その身体にはゴブリンの赤い血が飛び散っており、不気味さを漂わせている。


 男はゴブリンの身体に入れた切り込みに手を掛け、一斉に引き下ろす。


「グギャアァァァ!!!!!!!!!」


 先程よりも大きな声でゴブリンは鳴き叫ぶと失神し、糞尿を垂れ流した。

 男はその手に緑色の皮を握っている。拷問していたゴブリンの生皮を剝いだのだ。


「貴族の前で糞尿を垂れ流すとは不敬なゴブリンである。凌遅刑に処す」


 男は貴族であった様だ。貴族の男は失神したゴブリンに対して凌遅刑を宣告する。

 凌遅刑とは中国で行われた処刑方法で、生きたまま肉を削ぐ処刑だ。


 男は側にあった桶から白い粉を掴むと、ゴブリンへと投げ掛ける。


「グギャァァ!!!!!!!」


 生皮を剥がされたゴブリンの肉に白い粉が掛かると、失神していたゴブリンは目覚めるとともに叫び声を上げた。

 貴族の男が掛けた白い粉は塩だったのである。傷に塩が掛かったゴブリンは痛みに飛び起きたのだ。


 貴族の男は、手に小刀を持つと、醜く歪んだ笑顔をゴブリンへと向け、その刃先をゴブリンの肉へと向ける。その後、貴族の男はゴブリンに対して凌遅刑を行ったのであった。



 凌遅刑に処されたゴブリンは、途中で絶命してしまう。そのため、男もゴブリンへの関心を失ったのであろう。愉悦に歪んだ笑顔から、表情の抜けきった顔になる。

 貴族の男は、手にした小刀を机の上に置くと、拷問部屋を出た。


 貴族の男が拷問部屋を出ると、口髭を蓄えた男が立っているのが目に入る。


「セーデス、何かあったか?」


 貴族の男はセーデスと呼んだ男に何用かを問うた。セーデスと言う男は、この家の家令である。


「御当主様、御義母上がお呼びにございます」


「義母上が……?」


 当主と呼ばれた貴族の男は、義母が呼んでいると言う言葉に顔を顰めた。そして、仕方無く義母の部屋へと足を進める。


 義母の部屋へと辿り着いた当主の男は、入室の許可を得ると、部屋の中へと歩みを進めた。

 部屋の中には、義母と義母付のメイドがいるのみである。義母の女は、年若く美しかった。当主の男とはそんなに変わらない年齢の様に思える。

 義母は、当主の男を見るなり、顔を上気させて、当主の男に抱き着いた。


「ファーリ、ずっと待っておりました。切なくて、切なくて……」


 ファーリと呼ばれた当主の貴族の男こそ、この貴族家の当主であるファリマテク・ザス・クヴァファルークである。

 義母はシェロリエ・ベル・クヴァファルーク、ファーリより2歳上の女性であった。


「シェリー、切ないなどと……」


 ファーリは抱き着いてきたシェリーの背に手を回すと、違和感を感じる。そして、彼はあることを思い出す。

 シェリーの息は徐々に荒くなっていき、ファーリを見る目には情欲の色が浮かぶ。


「シェリー、ドレスを脱げ……」


 ファーリはシェリーにドレスを脱ぐ様に命じる。シェリーは言われるがままにドレスを脱ぐと、その身体に縄が巻き付いていた。それも、亀甲縛りで……。

 ファーリは今朝方、シェリーを縄で縛ったことを思い出したのである。


「はぁ、はぁ……。ファーリ、もう我慢出来ません……。お情けを……」


 シェリーはそう言うや否や、ファーリの前に跪くと、彼の下衣に手を掛け、脱がし始める。

 ファーリは、せっかくゴブリンを拷問して心地好い気分であったのに、水を差された気がしたものの、拷問で興奮していたことも確かであった。

 ファーリは、シェリーに男根を咥えさせ、口淫である程度の硬さを得ると、シェリーに壁に手を掛け、尻を自身に向ける様に指示をする。

 シェリーの女陰は前戯の必要が無いほどに濡れており、ファーリは自身の男根を挿入した。


 その後、ファーリとシェリーは情交に耽る。最終的にはベッドでの行為を終えたファーリは、視線を部屋にいるメイドへと向けた。


「風呂の準備が整っております」


 メイドの言葉を聞いたファーリは、ベッドに横たわる荒い息を吐き続け、体液塗れのシェリーを放置し、風呂場へと向かうのであった。



 このファリマテク・ザス・クヴァファルークこそ、王国稀代の悪徳領主と噂される男である。

 彼には、余人に伝えていない秘密があった。それは、21世紀の日本から転生したことだ。

 そんな転生悪徳領主は気儘な生活を送りたいと願うものの平穏な生活を過ごせる訳も無い。彼の転生生活は、常に波瀾に満ちたものであった。

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