1月30日① 暗号通貨を買う

女:「おはようございます。出発の準備を始めました。起きて朝食を食べることを覚えていて、覚えていて菲菲を考えますよ」


 その日の朝はそのメッセから始まりました。菲菲というのは、相手の台湾名だそうです。


 なんとなく意味は分かりますが、本当にそうなのか確かめるのも面倒で、「おはようございます、菲菲のことを考えてますよ」


 と返事をしました。


 昼過ぎに、返事が。両親のウェディングドレス撮影につかれたとのこと。

 それから、昼ごはんのお話が続きます。


女:「時間があれば教えてください。投資ビジネスの開始」


 その日の午後、コインチェックに入金をしました。

 それを相手に伝えます。


女:「それで、預金はもうコインチェックに届きましたか?」


 そのメッセとともに、焼き肉(もしかしたらステーキ)の写真とお寿司の写真が送られてきます。


 まあ、豪華そうな食事。焼く前の肉の上に、部位の名前が書いてありますが、繁体字のようです。ほんと、よくわかりません・・・


女:「コインチェックを開いて、スクリーンショットをお送りください。プライマリーマーケットに参入して新しい暗号通貨を購入し、利益を得る方法を段階的に説明します」


 さて、とうとう始まりました。一体どうなることやら……


 正直に言うと、私は彼女が詐欺でもそうじゃなくても、どっちでもよかったのです。ただ、「面白いラスト」であれば。

(ここまできちゃうと、「実は詐欺じゃありませんでした」のほうが面白かったんですけどね・・・)


 ここから怒涛のやり取りがスタートします。


 特徴は「一つ一つの作業につき、いちいちスクショを要求してくる」ということでした。

 この日だけで一体何枚のスクショを送ったことか。正直、疲れました。途中で嫌になってます。


 まずはコインチェックで暗号通貨を買えとのこと。指定されたのは「イーサリアム」という暗号通貨です。

(後で調べると、ビットコインと並んで主要な暗号通貨だったみたいです)


 とりあえず全額それを買えという指示。


 まずそこで「?」が付きました。値段も見ずにいきなり買うのかといったところです。


 ただ、ざっと見てみると、どの暗号通貨も同じような価格変動を見せています。小幅な値動きは、あまり利益には影響しないようです。

(これも後でわかったのですが、コインチェックでは売値<<買値のため、頻繁な売買をすると損する仕組みになっています。いわるゆ『二次市場』ではそういうしくみなのでしょう)


 まあ、もう足を突っ込んでいます。


「毒を食らわば皿まで」


 行けるところまで行きましょう。


 イーサリアムを買ったことを伝えると、今度は何やらURLが送られてきました。


女:「リンクをブラウザにコピーして開き、スクリーンショットを送ってください。順を追って説明します」


 いや、さすがにURLをいきなり踏む気にはなりません。

 ただ、「押せ」ではなく、「ブラウザで開け」とありますので、ワンクリック詐欺ではなさそうです。そもそも、ワンクリック詐欺なら、こんなまどろっこしい方法はとらないでしょう。


 一応、googleで検索してみました。


 ただ、ここで私は一つ重大なミスをしました。この検索をスマホで行ったのです。

 これも後でわかったのですが、スマホのグーグル検索とPCのグーグル検索では、検索結果が違っていました。


 なぜ? 私だけ? この理由はわかりません。スマホとPCで検索エンジンが違うのでしょうか。これが後々響きました。


 さて、検索画面に並んだのは海外のサイトばかり。「詐欺」といった文字は見当たりません。(それを検索で確かめたのです)


 そこで私は、そのサイト、「Encrynat Exchange」(近寄らないようにお願いします)をグーグルの画面上でクリックしました。


 出てきたのは、紫色の背景に黒の画面。暗号通貨の一覧と価格が並んでいます。

 色は違えど、画面はコインチェックと似たようなものでした。


女:「これが一次市場です。私たちが投資する新しい暗号通貨は、プライマリー市場専用です」


 コインチェックは、暗号通貨の所有権を取引するサイトです。たぶん、一次市場というのは暗号通貨そのものを取引するマーケットなのでしょう。


 詳しい方ならいろいろわかるでしょうか、生憎私は、暗号通貨に関しては全く知識がありません。興味もない。これも失敗だったのですが、出てくる用語を逐次調べるべきでした。なら、もっと早い段階でいろいろ気づいたでしょう。


 はっきりいって、めんどくさかったんです。


 サイトには日本語もあるらしく、それを選択すると、日本語で表示されました。


 怪しい日本語――いや、まあ、海外のゲームだと怪しい日本語が並んだりするので、「そういうもんか」と思っちゃいました。これもだめですね。


 さて、相手が私に「アカウントを登録する」よう要求してきました。メールアドレスで登録するとのこと。これもコインチェックと同じです。そしてパスワードの設定。


 私は少し考えて、メールアドレスをgmailのものに、パスワードはこれまで使ったことのないものにしました。


 ここでパスワードを抜くとは考えにくかったのですが、まあ、念のためです。


 今になって不思議に思うのは、「機関コード」というものを要求されたことです。

 それを相手に伝えると「01VV」と入力するよう言われました。


女:「これは、私が多くの時間、エネルギー、およびお金を費やした私の金融機関コードです。安全に保管し、誰とも共有しないでください」


 ここでも「?」です。

 そんなものを、会ったこともない人間に教えてどうする?


 ただ、このように言われた人が、いい人であるならいい人であるほど、「私を信用してくれてるんだ」と感激するかもしれませんね。


 詐欺というものは、いい人ほど引っ掛かりやすいと思います。だから、「引っ掛かるほうが悪い」という論調には全く賛成しません。


 ちなみに「引っ掛かるほうが悪い」という論調が支配的な社会がどういうものか知りたければ、中国に行くといいですよ^^

 私は旅行してそれを散々見せられました(笑)


 さて、アカウントの登録が終わりました。


 すると相手は、「そのアカウントに、通貨を入金する」と言ってきたのでした……


(つづく)

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