1月26日① 日常の一コマ
朝起きると、女から写真とメッセが送られていました。
女:「おはようございます、いい一日でした」
なぜ過去形なのか、どこまでもわかりません。写真はバラが咲く庭の写真。
そのあと彼女は、昼に友達と鍋を食べるとのこと。
しばらくあと、昼過ぎにその写真が送られてきました。
料理を前にした彼女の写真。そして友達と一緒に撮った写真。
その友達は女性で、年は彼女と同じくらいでしょうか。彼女はフェンディのシャツ、友達はグレーのセーターを着ています。
送られてくる写真は、多少の加工がされているようですが全く違和感がありません。
自撮り写真では、後ろに鏡が写っているのですが、自撮りしているスマホやその画面も写っています。
これだけ写真を見せられると、「どこかで用意した写真」には全く思えません。正直、写真だけを見るといまだに騙されたとは思えないでいます。
写真についての話をしばらく。そして、昨日言っていた『バッグ』を買ったのかと聞いたところ、明日買いに行くという返事が返ってきました。
そして、さらに一枚の写真が送られてきました。
黒い背景に、緑と赤のグラフが描かれています。
女:「昨日は信じてもらえなかったかもしれませんが、今日の結果はアナリストの専門性を証明しています」
なるほど、仮想通貨が値上がりしたというグラフのようです。
私の興味なさげな返事が、「信じてもらえなかったかも」という言葉になったのかもしれません。
私:「信じてますよ。かなり上がってますね、すごいです」
女:「20%になりました。明日バッグを買いに行きます。ホホホ」
20%の値上がりで、ブランドバッグをすぐに買いに行こうというお話。
本当のことなら、いったいいくら運用しているのか。
少しずつ仮想通貨の話が増えてきました。私はまた警戒をし始めたのですが、それを打ち砕く写真が次に送られてきます。
彼女が薄いオレンジ色のルームウェアを着て、台所で肉を切っている写真。どうも料理を手伝っているようです。
そばにはシンクとコーヒーメーカー、そして電子レンジ。台所はグレーのマーブル模様のタイル。
誰かが撮ったのでしょう、ピースサインもしていません。真剣に料理をしている横顔。化粧はしていますが、ほとんど加工されていない(ように見える)写真でした。
飾らない、日常の一コマ。肉ピーマン炒めを作っているとのこと。父親の好物だそう。
私は自分の頭の中で警鐘を鳴らしました。油断している自分に気づいたからです。
そこでわざと、仮想通貨の話を振ってみました。
私:「あなたの言った通り、通貨が値上がりしていますね」
女:「兄も色々助けてくれましたし、チームも経験豊富な仮想通貨分析のデータと豊富な金融関係の友人に頼っていました。これは私の仮想通貨分析チームに大きな助けとなり、すべてが私にとってうまくいくことを確認しました。」
女:「まだ始まったばかりですが、チームの最新の分析によると、Web3.0トークンを所有している私は、一か月で少なくとも何十倍もの利益を得ることができます。価格はまだ安いので将来結果が出るでしょう」
ここまでの彼女の話に不自然さは感じられません。いや、全てが不自然だからこそ、その中身が不自然に感じないともいえるでしょうか。
はっきり言ってしまえば、SNSで知り合っただけの人間にこんな話を聞かせること自体が『不自然』なのですから。
(つづく)
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