1月25日②「お色気」からの「儲かった話」

 仕事が一段落した夜、LINEにメッセージが。最後に送ったメッセへの返事かと思いきや、写真が送られてきていました。


女:「ヨガの練習に行きました。後であなたに返事します」


 そのメッセは18:30。その後19:30に写真が送られています。

(台湾とは時差が一時間。相手が台湾にいるのなら、台湾時間で17:30、18:30になります)


 至近距離から撮った自撮り写真でしょうか。ウィンクとピースサイン。白いノースリーブの(というか昔で言うところのランニングシャツ)ウェアは、肌にぴったりとしたもので、胸元までがばっと開いています。


 右乳房の谷間辺りに黒子がありました。そこで、依然送られてきたナイトガウンの写真を見返してみたのですが、その写真でも同じ位置にガウンに透けて黒子が見えます。


 どうも、同一人物の写真のようでした。


 この写真が本人の者なのか、どこからか手に入れたものなのかいまだにわかりません。本人の写真ならたとえ加工されたものであっても当然『個人情報』となるのですが、ちょっと考えにくいですが・・・


(この後もまだ写真が何枚か送られてきたのですが、加工されていないものもあり、相手を『詐欺』だと断じることを躊躇していた原因になりました)


女:「機会があれば一緒に運動します」


私:「とても健康的で、かわいいですね」


女:「エクササイズが終わりました。上機嫌で二日間ストレッチをさせてもらいました。仕事は終わりましたか?」


 このあたりのメッセは『機』になっていました。これも、私を混乱させる原因になっています。


 私はまだ仕事が残っていたので、それを終わらせた後、メッセを送りました。


 このあとしばらく、運動や写真の話が続きます。

 と、その途中でいきなり話が変わります。


女:「あなたにいい知らせがあります。知りたいですか?」


私:「なんでしょう、知りたいです」


女:「明日、私の新しいコインが18~25%値上がりすると兄からメールが来ました。そして私の好きなバッグを買うことができます。明日は私と一緒です。立ち合いに来ます」


私:「おお、それはすごいです。おめでとう。立ち合いとは何ですか?」


女:「新しい通貨の上昇の結果を私と共有しています」


 どうも購入した暗号通貨が値上がりするのでその利益で買い物をする、ということのようです。


 いや、私には全然関係ないよね……


『明日上がる』というのが気になりました。なぜそれが分かるのか。

 それでは「インサイダー取引」です。


 まあ、株式とは違うので、そういうのもありなのかもしれません。しかしそれは個人単位では到底無理なことです。


「大型のファンド会社がからんでいるのか? ずいぶん大きい話だな」と思いました。


私:「バッグが好きなのですね。何色のバッグですか? やっぱり、赤色?」


 中華世界では、赤色は縁起のいい色。なのでそう聞いてみます。


 と、次のメッセージを見て私は、かなり大きな疑念を抱きました。

 中国語のメッセージが送られてきたからです。

 使われていた漢字は『簡体字』でした。台湾で使われている『繁体字』ではありません。


 続けて別のメッセージが。


女:「赤ではなく、白と黒があります」


私:「白も黒も素敵な色です。中国語は読めません。英語なら読めるのですが」


女:「ごめんなさいね、あなたとチャットして私はとても熟知していると感じて、何年の友達を知っているようです、あなたが日本人であることを忘れました!」


 台湾には、もともと台湾に住んでいた人、国共内戦時に台湾に移ってきた人、そして少数民族がすんでいます。


 しかし、大陸で簡体字が使われ出すのは、文化大革命以降ですから、台湾人が日常的に簡体字を使うとは考えにくい。


 しかも彼女は、「あなたが日本人であることを忘れていた」と言ってますが、いや、直前まで日本語つかってるでしょ……


 これは相手の大きなミス。

 私はここで「相手は日常的に簡体字を使っている」ことを確信しました。


女:「すべての通貨が上がるわけではありません。何万種類もある仮想通貨の中から、選択することが重要です。私が今売買しているWeb3.0トークンのように、一時市場では内部購入の段階なので、価格は着実に上昇していきます」


 中国語のメッセージが取り消され(スクショを取っておくべきだったと後悔しています)、再びメッセが送られてきました。


 見ての通り、文法的に誤りのない日本語です。


 なるほど。そう思いました。

 確定ではありませんが、きっとこうなのでしょう。


 簡単な文章は日本語で返す。複雑な文章は中国語を日本語に翻訳して送る。


 全部が全部翻訳しているわけではなさそうです。ここで繁体字が使われていたら、私は最後まで騙されていたと思います。


私:「なるほど、理解できました」


 どうなんでしょう、これは誘い水だったのか、それとも布石なのか。


 とりあえず私は、興味がないニュアンスを込めて、それだけを返しました。


 それを感じたのかどうかはわかりませんが、そこからは日本に住んでいるという従姉の話とコロナの話になりました。


 それがひと段落したところで、相手は寝るとのこと。

 相変わらず最後のメッセージは「おやすみ」という日本語が載ったキティちゃんのスタンプでした。


 この日はそれで話が終わりました。


(つづく)

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