ストレンジャー・クロニクル 〜不審者たちの真実〜

もう諦めた

※以下、「日本不審者情報センター」より引用

（神奈川）藤沢市石川で下半身露出　２月３日朝

https://nordot.app/994381409722826752?c=134733695793120758

神奈川県警によると、３日午前８時ごろ、藤沢市石川の路上で男子児童への下半身露出が発生しました。（実行者の特徴：中年男性、青色パーカー、小柄、青色リュックサック）

■実行者の言動や状況


・男児に尻を見せた。

■現場付近の施設


・石川小学校、秋葉台小学校、駒寄小学校、天神小学校、善行小学校など

〜〜〜

　傷ついていたのだ、本当は。

「お尻汚い」

　そうカミさんに言われたのだ。

　スマホで自分の写真を撮ったのは、あれが初めてだった。

　俺の尻は確かに汚かった。

　特に、満遍なく薄く生える毛が汚らしさを増長していた。

　ネット広告で男の脱毛というのを知って、俺はすぐに予約を取った。

　俺の尻が生まれ変わるには、もうこれしかない。

　　　＊＊＊

　画面に映るツルツルになった俺の尻。

　だが、まだ足りない。

　この尻にはハリがない。

　すぐにジムとメンズエステの予約を取った。

　　　＊＊＊

　数ヶ月が経ち、俺の尻は見違えるほど美しくなった。

「俺の美尻コンテスト」があれば、上位入賞間違いなしだ。

「どうだ？」

　カミさんにずっとひた隠しにしていた尻を見せる。

「綺麗すぎて逆にキモい」

　俺は家を飛び出した。

　もしかしたら、泣いていたかもしれない。

　家出である。

　数日は家に帰らない想定で、リュックに着替えなど詰めて当てどなく歩く。

　俺の美尻計画は間違っていなかったはずなのに……。

　向こうから男子児童がやってくる。

　こうなれば、第三者の意見を聞くのが一番いい。

　俺は静かにズボンを下げて、男子児童に尻を見せた。

　男子児童が応える。

「すみません、リュックで隠れて見えません」

　自分の顔が猿の尻より赤くなっていくのを感じる。

　何をやっていたんだ、俺は。