絶対的な信頼

 ついに最新鋭の技術で作られた迷彩服を手に入れた。

 これがあれば人の目を誤魔化して僕は自由を手に入れられる。


 僕は幼い頃から人の視線が気になってしまい、まともに生活ができなかった。だからずっと自分の姿が他人から見えなくなればいいのに、と思っていた。


 そして、ついこの前、アメリカのとあるウェブショップに高性能の迷彩服が売られているのを見つけたのだ。

 サイトの説明には、DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)が開発し、周囲からの視認性を低めることができると書かれていた。

 あのDARPAが関わっているものなら間違いない。僕は即決して購入した。


 迷彩服が届くまでの2週間は人生で最も長い2週間だった。早くそれを着て外に飛び出したかったのだ。


 そして今日、僕は迷彩服を着て外に足を踏み出した。ダウンジャケットだったのは意外だったが、DARPAなら問題ないだろう。


 僕はそのままずっと乗れなかった電車に乗ってみることにした。


 そこで、なんとも美しい女性を見つけたのだ。

 空いている車内。彼女の他には、数えるほどの乗客しかいない。

 僕は迷彩服の力を借りて彼女の隣に座って、その美しい横顔を見つめた。


 こんなこと、この迷彩服がなければできないことだ。



〜〜〜



※以下、「日本不審者情報センター」より引用


(岐阜)名鉄各務原線の列車内で不審な接近 2月4日夜

https://nordot.app/994864235806752768?c=134733695793120758


岐阜県警によると、4日午後8時35分ごろ、名鉄各務原線の列車内で女性への不審な接近が発生しました。(実行者の特徴:男性、20代後半〜30代前半、マッシュルーム頭、迷彩柄ダウンジャケット、黒縁メガネ、黒色マスク)


■実行者の言動や状況


・名鉄岐阜駅に停止中の空席の多い列車内で、女性の隣に座り、密着し、凝視した。

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