第17話  2年後・・・悲劇

2年が経って、僕は16歳の誕生日を迎えた。

ママは、相変わらず太ってたし、パパは僕に必死に字を教えてくれていた。

その成果は、少しずつ出て来て、簡単な読み書きなら出来るようになったんだ。

どうもパパは、何処かの学校で学問を習ってるんじゃないかって言うのが、ママの推測だ。

こんな辺鄙な村に学校なんて無いし、村には字の読めない子なんていくらでもいる。

でもパパは、僕に字を教えるのにとっても熱心だった。


身長もグングン伸びて、パパの背をもう少しで追い越せるくらいかな。

ヒューイッドとも仲良くしていた。

村長の家には、勉強の合間に良く入り浸っていたよ。


夕暮れから、晩御飯までの間にセネガルドと魔法の練習をしていた。

風の大将は、風の力でいろいろな事が出来る事を教えてくれた。


空を飛ぶこと、ジャンプも可能だそうだ。風のマントの術とかいって、気配が隠せるものもあるみたいだ。凄いなぁ・・・

僕は馬鹿の一つ覚えのように、エアボールの練習ばかりしていたからね。

庭が悲惨な状態になって、ママに怒られたと大将に愚痴ったら教えてくれた。


その日は急にやって来た。


切羽詰まった状態で、ヒューイッドが山の家まで駆けて来た。

体格の良い、太っちょのヒューイッドには、坂道はきつそうだ。

僕は、天気が良いので、風の大将と空を飛ぶ練習をしていたんだ。


「あれ~?ヒュー、どうしたの?」

「た、大変・・大変なんだ!!村に・・村に魔物が沢山入って来て・・・」

「魔物!?」


いつの間にか後ろにいたパパが急いで、


「様子を見てくる!!タクト、ヒュー。ここの居ろ!!アムリットを頼むぞ!!」

「ホクト!!」

「もしもの時は、タクトにアレを。」


パパは、ママにそう言い残して山の下へ走って行った。


パパが見えなくなった直後、パパの声の悲鳴が聞こえてきた。


「パパ!!」


僕が様子を見に行こうとすると、ママが止めた。


「止めて!!タクトゥール!!お前は逃げるのよ。」

「ママは!?」

「何処にも行けないわ。魔物ももうすぐここへも来るわ。待ってなさい!!」


そう言うとママは、家の中に入って風呂敷みたいなものを持って来た。

大切なものを保管してあったようだ。


「お前には、風の精霊が付いてるわ。逃げなさい!!これを持って。」


ママは、僕に風呂敷を押し付けて言った。


「魔物なら、僕がエアボールで・・・」

「1人でどうこう出来る数じゃないよ!!すごい数なんだ!!」


僕が言うと、ヒューイッドが慌てて僕の言葉を遮った。


「村長は、ヒューイに私たちにこの事を伝えさせるために、此処に寄越したのね!?」


ママが、ヒューイッドに言った。

ヒューイッドは、頷いた。


「セネガルド、アムリットが命令するわ!!タクトゥールとヒューイッドを連れて、此処から逃げて!!出来るだけ遠くに!!安全なところに!!」

<承知。>


一陣の強風が吹いた。 

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