第16話 学び舎回避
僕が、この世界の暮らしにも慣れてきた頃に、パパが東方から来た行商人から買った本を数冊渡された。
「来年になったら、お前を東の聖地の学び舎に入れるからな。」
「無理だよ~~僕、学校へは行ったことが無いんだよ~」
「無理でも行け!!神殿所属になれなければ、禄は出ないんだ。何としても行け!!」
普段怒らないパパが、この時ばかりは怖かった。
ママも、パパと同意見らしくて味方をしてくれなかった。
でも、僕が本を開いて、パパの夢は露と消えた。
「なんて書いてあるの!?僕読めない~~」
そうだよ、日本語の文字だって小学校レベルの僕に、異世界の文字なんて分かるわけないじゃん!!
「これが、アルム(あ)イルム(い)ウルム(う)エルム(え)オルム(お)
これに10個の子音を足して、文字は成り立っているんだ。」
「ローマ字みたいなもんだね!!」
僕は、少しホッとした。
でもパパは、
「こんなのは、5歳児レベルだ!!学び舎に行けば、古代レトア語の習得もあるし呪文だって覚えなきゃいかん!!」
「でも、僕、前の世界でも、ほとんど学校に行ってないし、こっちの世界に記憶は誕生日前のことは覚えてないし・・・やっぱり無理だよ。パパ。」
「パパいうのもやめんか!!父さんと言え!!これじゃあボケらったのタクトの方が扱いが楽だったな!!反抗ばかりしやがって!!」
「パパこそ、口が悪くなったね。」
ママは、僕が正気を取り戻したことで、パパが山の家に戻って来てくれたことだ嬉しそうだった。
そしてこの勝負は、僕が勝った。
この世界に馴染んでないこと。
初めての友達が出来て嬉しい事。
そして、何よりも字が全く読めなかったことで、僕の学び舎行きは回避された。
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