第15話  親友の、ヒューイッド

「勇者だって?どれだけ話を盛るのさ。

だいたい、マークウェルとリムジットは血が繋がってないじゃないか!!」


村長が、僕を馬鹿にしたように言った。

本当の事だけどね。

僕が、リムジットの孫としてこの世界に生まれたというなら、勇者マークウェルの要素は何処にもないじゃん。


「いや、タクトゥールは必ず強くなって、今、世間を騒がしている第2の魔王を倒すぞ。」


パパは、自信たっぷりに答えた。


「タクトゥール、あの樹に向かって石を投げてみろ。勿論精霊に力を貸してくれるように頼めよ。」


なんて、調子の良いことを言ってくるパパ。

どうしようかと思って、頭上の風の大将を見上げた。


「良い!?」

<まあ、お前の力の見せ所だ。気に風穴があく位はやってやるぜ。>


大将は、快く引き受けてくれた。


僕は、10メートルくらい離れた所から、全力投球で樹に小石を投げつけた。

太い樹だったけど、石は樹を完全に貫通して、後ろ側に落ちたんだ。


それを見ていた人はどよめいた。

パパは、満足げに僕の頭を撫でてくれた。


1人の男の子が、興奮気味に僕の所に駆けて来た。


「お前、凄いよ!!ダチになろうぜ。俺はヒューイッド・ランス、ヒューって呼んでくれ!!」

「僕はアラミネ・・・じゃなくて、タクトゥール・ラミネスだよ。タクトって呼んでよ。」


僕は、生れて初めて友達が出来たんだ。


この日から、毎日ヒューイッドと遊ぶことが多くなった。

でも、ママは渋い顔をしてる。

折角、人並みなことが出来るようになったんなら、お勉強をしなさいだって!!

何時の親も同じだね。

でも、これにはパパも同意見らしく、もう少ししたら、僕を遠い学び舎に入れるって言うんだ。

そこで、一人前の魔法使いになる訓練をして来いだって!!

そんなことしなくても、魔法は使えるのに!!


「良いなあ、俺だって、こんな田舎の村は出て行きたいんだぜ。でも、家を継がなきゃな・・・」


ヒューイッドは村長の1人息子だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る