はるか昔の別れの話

ミンイチ

第1話

『別れはどこにあるのかな?』


 仲間の1人がこう告げてきた。


『どこってそりゃ、昔話の中にならあるだろな』


 別の仲間がこう返す。


『そうじゃなくて、私たちがいま生きているこの世界のどこに別れがあるかが知りたいんだ』


 私たちが今生きているこの世界は電脳化がほとんど完了した世界だ。


 友人とはいつでもどこでもを合わせて話すことができる。


『別れって、物じゃないと思うな』


 私は仲間にこう告げる。


『じゃあなんなのさ


 昔話には「別れを告げる」って書いてあるけど、今の世界には別れなんて物はないじゃないか


 それに、その告げることばも毎回違うんだから、私は何かを言う機械だと思うんだよ』


 初めに聞いてきた仲間はこう反論する。


『じゃあ、その設計図はどこかに残ってるはずだろ


 ライブラリで探せば見つかるんじゃねぇか?』


『もう探したよ


 けど、見つけられなかったんだよ


 出てきたのは昔話ばっかりで、詳しい説明なんてなかったんだ』


 私は彼らにこう質問する。


『じゃあ、「別れ」だけで調べてみたらどう?』


『そっちももう調べたんだよ


 「離れ離れになること」「死別すること」なんだって


 離れ離れになることも死ぬこともないじゃないか


 昔の人はなんでそんなことを考えたんだろう』


『そういうことならよ、「別れ」ってのは概念的な何かなんじゃねぇか?


 今ではもうなくなった「離れ離れになること」とか「死別すること」とかのよ』

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はるか昔の別れの話 ミンイチ @DoTK

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