最終話 支配人の原風景
真夜中。
王都グレンカイナは午前二時。
さて今夜のお仕事もこれでひと段落だ。
朝が来るまでは完全にお役御免とはいかねえが、夜半を過ぎて時間売りの嬢は手仕舞い。
時間売りの嬢達への洗浄・回復魔法もかけ終わったし、深刻な体調不良を抱えている嬢が居ないことも確認が済んでいる。
あとは一晩売りの嬢やそのお客様に問題が起らない限り、夜明けまでは基本的にのんびりしたもんだ。
時間売りの嬢達は明日に備えておねむだし、一晩売りの嬢達も多くは夢の中だろう。
朝まで耐久戦を繰り広げているようなのは知らん。
がんばれ。
本来華やかな娼館が
人の気配はそこかしこからちゃんとするのに、全てが静かな感じ。
寝ているような、半分起きているような不確かな気配を、娼館『
今夜は執務室で一人、その時間を迎えている。
今日も相変わらずの騒がしい夜を越え、身体がぐったりしていることが自覚できる。
執務室の立派な椅子に深く身体を沈め、目頭を軽く指で揉む。
自然と吐き出される長い溜息とともに、身体各所の疲れが把握できる気がする。
これが実は本当に気がするだけで、俺の魔法で回復させるとなると思っているところと全然違うところが疲弊していたりするから面白い。
いや怖いのか。
事務方で動いている俺や店員でもこうなんだ、実際に身体張っている嬢達の疲れはこんなもんじゃねえだろう。
俺の『ユニーク魔法』はかける対象の状態に関係なく、俺の魔力で病気を癒し体力を回復させる便利なものではあるが、心には効果が無い。
嬢達の身体にかかる負荷は俺が何とでもしてやれるが、心にかかる負荷は適切な手段で軽減するしかないのだ。
一定時間以上確保された睡眠時間、美味くて栄養バランスが考えられた食事、適切な休暇設定。
そういった物理的になんとでもなる条件はできるだけ整えているつもりだが、それだけで何とかなるものでもないのが心への負荷だ。
だがよく寝て、美味いもの食って、ちゃんと休む。
そういう単純なことが一番大事なのは確かだろう。
俺のユニーク魔法が実際はかける対象の状態に左右されないにもかかわらず、各々の基礎体力を魔法で転用しているだけだと言っているのはその為だ。
そうでも言わねえと無理する連中ばっかりだからな、
自分の為ってんならまだしも、
それ以上はお互いが気を付け、上手く支え合っていくしかねえ。
うぬぼれや油断は禁物だが、
まあそりゃ俺の手柄ってよりゃ、嬢達がみんなでいい空気をつくろうと思ってくれてるが故なんだけどな。
某三人娘にいわせりゃ、そういう気にさせたのは俺なので、ふんぞり返っていればいいらしい。
そういう訳にもいかねえだろうが、まあ頼りにゃしてる。
何もかも自分でやっちまおうとすりゃ、あんまりよろしくないことになるのはさすがにもう思い知っている歳だし、上手く支え合う事こそが肝要だ。
簡単だが、難しい。
支え合うってなそんな不思議な事だと思いはするが、個人的には困った時に、ちゃんと困ったと声に出せるようにできてりゃ上出来だと思ってる。
どんなものであれ弱音は吐いていい。
それを聞いて、どう対処するかを一緒に考えられるからこそ人の集団には価値があるんだと思う。
まあ
それだって、支え合いの一つの形だ。
そういうこともわかった上で、言い合える場であることが重要なのだろう。
しかしまあ、よくもこんなふうに思えるようになったもんだ、俺も。
頭では娼婦の為だとかあるべき夜の街だとか、ご立派な事を考えていたような気はするが、実際は手前の事で手一杯だった。
当たり前っちゃ当たり前の話だが、嬢達との関係も今みたいなもんじゃあなかったし、何よりルナマリア、リスティア嬢、ローラ嬢の三人にゃ完っ全に舐められてたもんなあ……
今みたいになれたのは、やっぱり俺の『ユニーク魔法』の恩恵が大きい事を認めないわけにはいかない。もしもこの力がなかったら、俺は今みたいな
いやその辺はあれか。
俺にこの力があったからこそ、
だけどそれもなあ。
最初に俺の『ユニーク魔法』の使い方に思い至ってなけりゃ、自滅してた気もするんだけどな。
長い時間を生きてると、
そんなことを取りとめなく考えていると、ずっしりとした全身の疲れが眠気を誘う。
自分の魔法で回復させちまえばそれで済むが、俺は結構疲れに逆らわずに微睡むのが嫌いじゃない。
事がありゃすぐに目は覚めるし、その時点で即回復させりゃあいい。
そのまま睡魔に身を任せ、意識を手放す――
事態は深刻だ。
だから娼館の
いや正直いろんな種類の「何故?」がありはするが、何も考えずにそれを聞いても答えてくれる人じゃないしな、
自分なりに考えた上で、正解はこうですか? と尋ねれば正解かハズレかくらいは答えてはくれるんだが。
それに今まで『師匠』と呼んでいたのに、今日からは『
何事も形から入るのは重要とのことらしい。
よって俺のこの格好も、
着るべき人が着れば格好いいのだろうとは思う。
純白のボタンダウンのシャツに、漆黒のベストとパンツ。上着も同色。
生地や仕立てについて全く詳しくない俺でも、こいつがとびっきり上等な代物であることくらいは理解できる。
制服と言われたからには身につけてはいるが、完全に服に負けている。
自覚があるだけに、笑いを堪えられるとへこむんですが師匠、もとい
いや問題はそこではない。
問題は俺が自分で思っていたよりもずっと女に
ここの
弱いだけならまだいいが、相当な女好きの疑いも発生している。
今更こんなことが発覚するとは、我ながら想定外だ。
甘く見ていた。
娼館の
戦闘ではクソの役にも立たない俺の『ユニーク魔法』を活かすには娼婦たちと直接接点を持つことは避け得ないとはいえ、魔法は非接触でかけることができるし、そんなことは問題になるとも思っていなかった。
普通に暮らして、普通に異性と接している程度では、『娼館の
俺が
つまりそこに所属する娼婦たちはみなとびっきりの美人揃いなのだ。
ただ美人というだけではなく、自分の見せかたを熟知している、その道のプロだ。
「花弁制度」という階級制度があるらしく、その上位
微笑みかけられれば真っ赤になってしまうし、一つ一つの仕草でこっちの思考をいいように
いや赤面しておろおろしている程度ならまだいい。
二人っきりの時に誘惑されれば、何も考えずにあっさりその誘いに乗ってしまいそうな自分が一番怖い。
その際に、とびっきりの娼婦である彼女らにとっても師匠――
特に上位の娼婦たちは、
その「契約」の扱いすらも俺に一任するといったのだ、
俺を籠絡すれば、彼女らの「契約」を完了させることも可能。
それでも
だが自分達と話す俺の態度から、「与し易し」とみられていることは間違いないだろう。
そしてそれはほぼ正鵠を射ている。
俺は間違いなく与し易い。
トップ娼館である
ルナマリア、リスティア、ローラと名乗った三人の美少女は、まだ年若いにもかかわらず『
綺麗過ぎて邪な想いを持つことすらもはばかられるような気がして思わず素に近くなった俺を、心の底から蔑んだような目で見ていた。
ちくしょう、素になって思い返せば確かにみっともなかったよ。
自分たち以外の娼婦にオタオタする俺が、本気で頼りなく、情けなく映っていたのは自分でさえそう思うので仕方がない。。
だがその冷たい視線のおかげで、何とか対策を練らねばならんと思い至る事が出来た。
与し易いとみて籠絡にかかるのではなく、俺のような青二才相手にもわかるくらい明確にバカにしてくれるというのは、考えてみればありがたい話なのだ。
彼女らにしてみれば、俺を骨抜きにしてやりたいようにやる方がよっぽど利のある話なのであろうから。
それをわざわざわかりやすく馬鹿にして、克己心を煽ってくれるってなどう考えても「親切」でしかない。
だからと言って悔しいのは悔しいんだけどな!
「生理的に無理だから、包み隠さず本心を出してみました」だったらどうしよう。
なんにしても、何としても見返してやらねばならない。
いやそれを除いても、何とかしなければ『娼館の
幸いにして俺には今、一つの腹案がある。
俺の『ユニーク魔法』は、衛生・体調管理に特化されたものだ。
それを深く理解し、工夫をすれば面白い使い方が出来ることに思い至ったのだ。
男にはどんな美女の誘惑もものともしない状態が、ごく短時間とはいえ存在する。
曰く『賢者モード』
それを俺の『ユニーク魔法』で人為的に生み出すことが出来れば――
名付けて人工的永続賢者モード!
これで俺もどんな魅力的な娼婦たちにからかわれても、さらりとドライに受け答えが可能になるはずだ。
この世に女さえいなければ、男は神のように生き得よう。
――トーマス・デッカー
女性を無くすわけにはいかないので、神には至れない。
だが賢者たること位は可能なはずだ。
そしてそれで俺の目的は充分果たされる。
俺のユニーク魔法をこんなふうに使うことを思いつくなんて、俺って結構天才なんじゃなかろうか。
しかもこれは娼館ではしゃぐお客様の血の気を一気に引かせるには、最強の技を手に入れたとも言える。
どんな強面であっても、「二度と勃たなくするぞ!」と脅されて平気な
正直
さて。
だいたいの魔法構築は完了しているし、後は実験するのみ。
万一失敗したらと思うと血の気が引くが、俺の魔法を駆使すればなんとか復活も可能なはずだ。
一応短時間で解けるようにしておいて、ここは度胸一発、実験してみるしかない。
虎穴に入らずんば虎児を得ず。
度胸一発、おもいきって試作魔法、仮名「人工的永続賢者モード」を自分に対して発動する。
…………。
これといって何か劇的に変わることはないな。
ただ妙に落ち着いていることは自覚できる。
さっきまで思い出してはのたうち回っていた恥ずかしい記憶も、思い出しただけで落ち着かなくなっていた綺麗なお姉さんたち、特にルナマリア、リスティア、ローラというトップ3の事を思い出しても、さっきまでのように心は乱れない。
それどころか、こうやって冷静になって思い出してみると、『
中でも俺の情けなさを指摘してくれた三人は、人間とも思えない美しさだ。
そりゃ男の本能を搭載したままであれば、冷静に相手することなどとても無理だという事が、こうなって初めて納得できる。
あれは俺や手玉に取られるお客様が情けないのではない。
男と生れた以上、抗い様のない存在が彼女たちなのだ。
弱ければ手玉に取られ、強ければ暴力ででも自分のものにしようとする。
そんなみっともない人生を送るくらいであれば、このまま文字通り賢者の――
――魔法の効果が切れた。
…………。
こわ。
こっわあ。
本気で血の気が引いた。
これ時限で解けるようにしておかなかったら、うっかり「もうこのままでいいや」で生涯男としての機能を取り戻さないままで暮らしかねないぞ。
いや時限にしておいても累掛け可能な状況なら、そろそろ切れそうだしめんどくさいからと累掛けしてしまう事も充分考えられる。
しかも俺本人が、それをよしとしてさらっさらの人生を全うしてしまいそうだ。
俺の魔法でなくとも、歳くって自然回復力が失われれば男ってああなってしまうものなのか。
枯れたおじいちゃんの穏やかさの秘密を、一足先に体感してしまった気分だ。
これは慎重な使い分けが必要だ。
確かに女の武器にまるで動じない自分には憧れもするし、
だけどそういう男の性をまるっきり放り投げての人生も味気ないもんだろう。
ついさっきまでの俺がそう思っていたように、確かに欲に振り回されるのはみっともいいものではない。
だけどそれこそが「男」で、男の性を歯ぁ食いしばって、やせ我慢するからこそのかっこよさってのもあるはずだ。
一人の男としては、そっちの方がよっぽどいいと思える。
だが高級娼館『
要は使い分けを間違わなければいいだけだ。
よし、ちょっと嫌な汗はかいたが、実験は成功とみていいだろう。
見てろよ、恐ろしいくらいに綺麗だった三人娘。
ルナマリア、リスティア、ローラ。
お前らの女としての魅力を十全に理解した上で、この上なく冷静に対応してやる。
『娼館の
彼女らにだって、自分をそういう目で見ない男がいるって事があってもいいだろう。
それが
「寝とる」
「寝てますね」
「熟睡だね~」
夜が明けて一晩買いの御贔屓筋と朝食を食べてお見送りし、お仕事から解放されたルナマリアとリスティア。
時間売りの最終客がいつも朝まで延長するために実質一晩売りと変わらぬ時間まで拘束されるローラがその二人と合流し、執務室へ
「余計な事さえしなければ、起きぬのな」
「完全に
「……うれしいですよね、無警戒」
常の
第一種警戒態勢の警戒対象に、自分達は含まれていないという事だからだ。
おそらくは無意識の事だろうから、ここで信頼を失えば、容赦なく再び警戒対象に戻されることは間違いない。
いやこの事実を知っただけで戻される可能性も高い。
千載一遇の悪戯のチャンスを得ながら、それがとりもなおさず
どのような状況でも、惚れた方が負けという大原則は適用されるようだ。
「一定までじゃがな」
「悪戯しようとしたら、最大警戒域まで一瞬だもんね~」
「それでもここまで許されているのは、きっと私達だけです」
余計な事をするなよ、という確認をお互いが取りあうように会話を交わす。
まあ確かにリスティアの言うとおり、ここまでを許されるのは自分達だけだという自信と喜びもある。
そうとなれば無防備に寝こけている顔を見ているだけでも充分か、と思えてしまうところが我ながら安いと思わなくもないのだろうが、本音なので仕方がない。
「……なんかすごいドヤ顔してませんか、
ほんの少し頬を染め、何がそんなにうれしいんだという表情で
「……いい夢見ておるようじゃのう」
こちらも熱に浮かされたような表情で、
少なくとも嫌な夢を見ているというような表情ではない。
また夢を見ており、それが表情に出るという事はそろそろ目覚めの時も近いという事だ。
寝顔を見るのは堪能した、少々の信頼と引き換えに悪戯をするのであればこれが最後のチャンスという状況ともいえる。
「……ちょっと見てみたくないですか、ローラ?」
「……のう、ローラ」
なぜかルナマリア、リスティアの二人がローラに話をふる。
「そりゃ見たいけどさ~。……裏切らない?」
ローラは寝顔を見つめるのではなく、眠る
その左眼だけが開いて、話をふってきた二人を見ながら言葉を返す。
見るのであれば、一蓮托生。
そういう確認だ。
ルナマリア、リスティアの二人がそうそうみせない真剣な表情で頷く。
これからやることはローラの単独犯ではなく、ルナマリア、リスティアも結託しての共犯であることを承認したのだ。
確実にばれる。そして怒られる。少なからず積み上げた信頼も目減りするだろう。
それでも「見たい」と思ってしまう事を止められないのだ。
つまりはローラには
「
それでも十分にプライベートの侵害にあたると思われるが、この四人の中では隙を見せた方が悪いという事なのであろうか。
その程度の事は許し、許されるという甘えにも似た信頼関係があるのだろう。
あるいは逆か。
偽りなく世界一の娼館で人気トップを誇る、百戦錬磨という表現ですら生温いいい女が三人揃って、たかが男一人の夢の内容を知ることに生唾を飲み込んでいる。
左手の美しい小指を艶やかな桜色の口唇に含み、唾液に濡れるそれをルナマリア、リスティアの前に差し出すローラ。
それを二人が左右から、少しだけ舌を出した口唇で啄ばむように舐めとる。
ルナマリアとリスティアの口唇同士は、すれすれのところで触れそうで触れあわない。
背徳的にも見えるこの行為がローラの能力を共有するために必要なものか、三人共に躊躇も恥じらいも見られない。
最期に三人の唾液が綯交ぜになって濡れるローラの小指を、眠る
体液の粘膜接触が能力発動に必要なのだろう。
触れた瞬間に、
その結果――
「お、お腹痛い……」
かろうじて声を出せたのはリスティアのみ、ルナマリアとローラはあまりの事実に声も出せないで震えている。
日頃
「男の人」の生態、それに引きずられた思考が新鮮で素直に面白い。
対象が想い人である
しかしおかげで
「私たちの技や手練手管って、
「その
「ずるいよね~」
四則演算乗法において、被乗数を零にしてしまわれれば乗数にいくら大きい数値――技や色気、手練手管を駆使しても意味がない。
零には何を乗じたところで零なのだ。
ある意味生物としては男ではなくなっている状態の
ずるいとしか言いようのない鉄壁の防御方法に文句を並べたてようとして、三人ともがほぼ同時に思い至る。
確かに
だが自分たちに対してはどうだっただろう?
本当にそこまで鉄壁だっただろうか?
――応えは否だ。
「……でも
「うむ、確かにな」
あからさまに色仕掛けを仕掛けた時は、
だが他愛もない会話や、ふとした接触。
それこそ街の男の子と女の子が、ふいに目が合って照れてしまうような状況で
「それって……?」
ローラも自分の全裸を見ても表情一つ変えずに上着を投げつけてくる
それはいつだってくだらない、とるにたりない事が原因だったように思う。
らしくないと思いながらも、落ち込んだ嬢をはげましているところを
誘惑とかそういうのじゃなくて、ただ寂しくて
そういう時、確かに
「つ、つまり男の人の生物としての本能、いわゆるエッチ系なものとは無関係に、私たちの事を可愛いって思ってくれた時、なんじゃ、ないか、な、って……」
言っている途中からリスティアが真っ赤に茹で上がる。
その意味を理解したルナマリアもローラも、他人の前で見せたことが無いくらいに赤面した。
まだ男になっていない男の子が、まだ女になっていない女の子に、それでも男として向けるある意味において不純物の無い好意。
それ故に生まれる、反応。
「お、女としての評価じゃないというのはいかがなものかとお、思うのじゃが」
「そ、そうよね~。そういう色気やスタイルも含めてのじ、自分だもんね~」
「でも……
女として超が付くほど美しく魅力的に生まれてきた三人は、それ故に極幼い頃から
男が自分を見る目は、デフォルトでそういうものだと思うほどに。
だからこそ、そんなことは不可能だと思いながらも自分の見た目やスタイルや、自然と流れ出す色気と言ったものをまるごと無視して、その上で好きになってくれる人に憧れたことは確かにある。
自分というものを形成する過程で、容姿をはじめとした持って生まれたものは確実に作用する。
故に恵まれた容姿や色気をひっくるめての「自分」だということはわかっていても、無いものねだりで求めてしまう事はしようがない。
うんざりするほどそういう目に晒されていてはなおの事だ。
つまりどう言い訳を並べたところで、
汗をかくくらいに赤面してしまう事を三人とも止められない。
「こういう恥ずかしいの、慣れてないからつーらーいー」
「わ、私もじゃ」
「てれさせる事にはなれてるんですけどね……」
「――知ったな」
常であれば聞いただけでテンションが上がるはずの
きゃあきゃあとテレたり話し込んだりしている背後で、深く静かに
そして三人の会話から、己の見ていた夢を覗かれた事に思い至った
ルナマリア、リスティア、ローラという女傑といっていい三人の心胆を寒からしめるほどに。
「悪気はなかったのじゃ、うむ、悪気は……」
「し、知りません、私はなにも知りません……」
「わ、わたしはやめよって……」
三人をして初めて聞く
しかし時すでに遅し、
「問答無用、記憶を失え」
「「「ごめんなさい!!!」」」
高級娼館であるはずの『
娼館という場であっても、笑いと嬉しさ
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