帝都ブリタニア
勝算はある。
俺はレインと感覚を共有し続けた結果、できる限り音を立てないで動く術を身につけた。高い草木を利用しハイゴブリンの裏手に回る。そのまま両腕で相手の首を捻り、首の骨をへし折る。
そして倒したハイゴブリンをゆっくり地面に置き、ルシウス達に合図する。
念の為にとルシウスがハイゴブリンの頭にナイフを突き刺しトドメを指した後、もう一度周辺を探り、周りにいるゴブリンを一体ずつ狩っていく。
こうして俺たちは体力の消費も最小限に抑え、順調に帝都へと向かって行った。
2日半かかる予定の帝都への旅だったが、1日半で着くことが出来た。
「皆さん思った以上に素晴らしい動きです。」
その皆さんの中には勿論ラックも含まれていた。
当初は旅に同行させることは出来ないと言っていたルシウスだったが、どうやらこの索敵能力と身体能力は捨てがたいらしい。
帝都は周りを鉄の城壁に囲まれた大都市で、四方に桟橋と掘りが有り、敵を近づけないようにしている。
しかし入る事は比較的スムーズにできるらしく、様々な格好の人間達が行き来する様子が見て取れる。
巨大な桟橋を通ると、その先には一直線に続く道があり、終わりには更に城壁に囲まれた城らしきものが見えてきた。
「私たちは一旦城へ戻り皇帝陛下へ報告してきます。夕刻にそちらの店に迎えにあがりますので、それまでは自由にして頂いて構いません。」
そう言って金の入った袋を俺たちに手渡し、ルシウスは城に向かって歩いていった。
俺とレイン、ラックは待ち合わせの店を確認した後、ラックも久々に来た帝都で少し用事があると言って足早に去っていった。
「どこか行きたい場所はあるか?」
「都会に来たのは初めてなので、何があるのか……」
言いかけた時、グゥーとレインのお腹の音が鳴る。
「まずは腹ごしらえでもするか!」
「は、はい……」
レインは恥ずかしそうに頷く。俺もこっちの世界の食べ物はパン位しかまともに食べたことがなかったので少し楽しみだ。
「まずはあそこに行ってみるか。」
近くにあった屋台に入ってみる。何かを焼いているようで、香ばしい匂いが食欲を唆る。
「お、そこのカップル!!
1本どうだい?」
屋台のおじさんが近寄るなり声をかけてくる。どうやら炭火で串物を作っているようだ。
カップルと言われてオドオドしているレインを他所に、とりあえず2本注文して食べてみた。
「お、美味いな。」
「本当、美味しいですね。」
「おじさん、これ何の肉?」
「ウルフのモモ肉だよ!!美味いだろ?」
犬かー
うさぎすら食ったことねぇけど犬かー
あんまりいい思い出がない上に普通に美味いんだよなー……
俺はおっちゃんから何も聞かなかったことにしてソレを鶏肉だと思いながらたいらげた。
「また来てくれよー!!」
元気に手を振るおじさんに引きつった愛想笑いをしながら屋台を離れた。
「一成さん!!今度はあっちからいい匂いがします!!」
串物の味が相当気に入ったのか、俺とは違いレインは大はしゃぎで様々な屋台を回っている。
ルシウスは結構な大金をよこしたようで屋台で金を支払っても全然減った気がしない。
屋台で買い物していると、この世界の食べ物の相場と渡された金の金額が大体分かってきたのだが、恐らくルシウスは数十万単位の金を平然と渡してきた。どんだけ金持ってんだアイツ。
昔の職業病が出てしまったが、目が見えないのに先導しているレインに急かされ、別な屋台へ向かう。
「お、次は海鮮か。」
海のものならある程度は大丈夫なはずだ。海鮮系の中華まんのような蒸し物が並んでいる。
「おじさん、2つ!」
「あいよー!」
ホカホカの中華まんが直ぐに俺たちの元に届く。
レインは夢中でかぶりつき、時折噛み締めるように笑顔になる。俺も食べてみると、海のものとは思えないほど食べなれた味だ。
「おじさん、これ海産物しか入ってないんだよな?」
「おう!産地には拘ってるぜ!」
豚肉の味がする。食感も完全に豚肉だ。
そこまで考えて俺はおじさんにそれ以上聞くのをやめた。
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